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2008年12月22日
この日も空は抜ける青さで晴れ渡り、申し分のないドライブ日和だった。が、いざ走りだすと、走行距離20万袰を超えたランドクルーザーもさることながら、石がゴロゴロしている道なので振動が激しく、お世辞にも快適とはいえなかった。車1台通るのがやっとの道も多く、落石をよけなければ通れないところもあるのに、ガードレールがない。いまにも崖下に落っこちてしまいそうで、気が気ではなかった。
最初の休憩地、カンパ・ラで止まったときは、心底ホッとした。「ラ」はチベット語で「峠」の意味。カンパ・ラは、4,794mの峠だ。眼下には、ヤムドクツォ湖が広がっていた。「トルコ石の湖」と呼ばれ、神が宿るというチベットの四大聖湖の一つといわれる。湖面の平均標高は4,441mで、面積は638平方キロメートル。ほぼ琵琶湖くらいの大きさだ。群青色の水をたたえた神秘的な湖面の眺めは、悪路の走行に疲れた私たちを、しばしなごませてくれた。
しばらくは湖畔沿いに、またガタガタ道を進む。標高が上がっていくにつれ、胸が高鳴った。富士山より遥か上にいるのだと思うと、なんともいえない興奮を覚えるのだ。そういえば、高山病のことをすっかり忘れていた。私たちのグループは高齢の団長をはじめ、よほど頑強なのか、だれも頭痛に見舞われることなく、元気そのものだった。私自身は少々食欲がなくなったが、たいしたことはなかった。高地順応トレーニングが功を奏したのだ。
道中、小石を積み上げてあるのをよく見かけた。「オボ」といって、神の怒りを鎮めるための石積みだそうだが、日本でも山歩きをするときに積み上げる、安全祈願や道標のためのケルンのようでもある。なかには大がかりに支柱が立てられ、タルチョ(経文が印刷された祈りの旗)がはためいて、仏教的な意味合いを感じさせるものもあった。
そうこうしているうちに、万年雪を頂いた7,000m級のニンジンカンサン(ノジンカンツァン)が見えてきた。と思うと、いきなり目の前に氷河が現れた。5,045mのカロ・ラに達したのだ。氷河は、独特の青っぽい色を帯び、相当長く続いている。万年雪が圧縮されて流れ出した姿だ。車を降りて休憩していると、ヤクに乗った遊牧民の子どもが近づいてきた。こんな高所に人が住んでいるとは……。ヤクの毛は長く、きれいに飾られている。荷を運び、毛皮や食用にもなるウシ科のこの動物は、チベットの人々には大切な存在で宝物と呼ばれているのだそうだ。
もう一つ峠を越して、ほどなく道は緩やかになり、平原が広がって農地が続き、街が近づいてきた。450km、約10時間半に及ぶドライブがやっと終わって、今日の目的地、ギャンツェに着いたのだ。