先の予測が難しいこれからの時代を生きていく今の子どもたちに、私立中高一貫校ではどんな教育が行われているのかを取材。共学化の1期生が2024年4月に完成年度を迎えた桐蔭学園中等教育学校。その一貫校ならではの取り組みをコラム連載で紹介する。
「自己調整学習の確立」を目標に5年生が夏休みに志賀高原へ!
2019年4月に男女共学化した桐蔭学園中等教育学校。共学化の「1期生」がこの4月に6年生(高3生)になり、「完成年度」を迎えた。
桐蔭学園中等教育学校は「自ら考え判断し行動する子どもたち」を教育ビジョンに掲げている。一人ひとりが多様な変化の激しい社会にしっかりと適応し、自らの人生を切り開いていけるための自立的な学習能力を身につけることを目指している。
この理念に沿って行われているのが夏休みの「志賀講習」だ。対象は中等5年生(希望制)。来たる大学受験に向け、5年生の夏休みに「自己調整学習の確立」を達成すべく、学年の6割に相当する157人が参加。冷涼な長野県の志賀高原に舞台を移し、快適な環境の中で5泊6日の宿泊講習に臨んだ。
午前中に英数国各70分授業を受ける。授業内で新たな知識を獲得することはもちろん重要だが、自分の弱点や不足していた部分をしっかり把握することはさらに重要だ。ここで「今日の午後、夜にやるべきことリスト」をしっかり作れるかどうかが鍵となる。
午後と夜の「自主学習」の時間では、午前中に洗い出した課題に、自主的に取り組むことが求められる。自習室の様子を見ると、個人で黙々と課題に取り組む生徒もいれば、ペアやグループで話し合いながら理解を深めている生徒たちもいる。桐蔭学園のアクティブラーニング型授業でみられる「個」の学びと「協働」の学びが両方見て取れる。午前の授業でぼんやりと頭に残っている学習内容が、この自主学習内で「そうだったのか!」と鮮明になる瞬間がある。
また、この講習には大学生の卒業生チューターが男女各3名同行している。わからないところをいつでもすぐに質問できるのは合宿形式ならではの利点。生徒たちは勉強の質問だけでなく、「同じ校舎で学んだ先輩」として受験のことや大学生活のことを盛んに聞いていた。身近な存在としてのチューターは、生徒たちにとって心強い存在だ。
講習期間中は玉田裕之校長も志賀高原を訪れ、生徒たちに激励の言葉を送った。
「志賀高原は、桐蔭学園の先輩方が何十年にもわたって夏の勉強で訪れてきた場所です。この歴史ある志賀講習で、ぜひ『自律的な学習』を身につけてください。皆さんが自分の意思でこの講習に参加することを決意した時点で、すでに『自主的』であるわけです。切磋琢磨できる仲間と、この恵まれた環境を最大限生かして、実りのある6日間にしてください」
最終日となる8月6日、名残惜しそうに写真をたくさん撮っている生徒たちは「やり切った」という晴れやかな表情をしていた。
講習後の生徒の「ふり返り」の一部を紹介する。
・講習中は自分自身との戦いに勝ったり負けたりと、良い意味での「挫折」を経験できた。この苦い経験を糧にして今後がんばっていきたい。
・自分がここまで勉強できるなんて自分でもびっくりしています。勉強時間がどんどん増えていくのがとても楽しかったです。
・自習室ではどんな時間帯でも集中して勉強している人がいて、みんなも頑張っているから自分も頑張らなければと思うことができました。
・チューターさんの存在がとても大きく、勉強を教えてもらったり、勉強法や進路についての相談など、たくさん話を聞いてもらった。
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取材協力:桐蔭学園中等教育学校
横浜市青葉区鉄町1614
TEL 045-971-1411(代表)
http://toin.ac.jp/ses/