第2回 駅前ビル編
フジサワ名店ビル/ダイヤモンドビル/ザ・プライム(神奈川県藤沢市)
神奈川県藤沢市南藤沢2-1-1
営業時間:10時~20時
藤沢駅前の秘境の地
藤沢駅前のおしゃれな駅ビルを抜けると、昭和時代を忍ばせる不思議なビルがある。一歩足を踏み入れると、駅前の新しいビル群とは明らかにチューニングが合っていない感じの独特な光景が広がる。“藤沢駅前の秘境”とも呼ばれるその建物が「フジサワ名店ビル」だ。
1965(昭和40)年に創業し、今年60周年を迎える同ビルは、昭和の名残を残す個性豊かな商店が多く、さながらビルの中に商店街や市場が丸ごと入っているような雰囲気だ。一見、有隣堂が大半を占めるビルにも思えるが、よく見るとペットフードと傘が一緒に売られているような何屋かよく分からない店も多く、さらにビル内は迷路のようなつくりになっており、時折自分の現在地さえも分からなくなる。そんな雑居濃度の高いカオスな空間は昭和の時代の象徴のようでもあり、知れば知るほど沼にハマってしまう魅力がある。
残念ながらこのフジサワ名店ビルは、老朽化により2027年に営業終了し、その後建て替えの予定だそう。今、ここでしか見ることのできない貴重な昭和遺産だ。
豊富なペットフードとともに傘や杖が売られている元金物店「マツバヤペットフード」。お客様の要望に応えているうちにこうなったそう(左)。ダイヤモンドビルにある老舗の茶屋店「たちばなや」では、静岡の銘茶とともに750種類もの国内外のたばこが販売されている(右)。
編集後記
近年、あらゆる街で再開発が進んでいる。便利になる一方で、どこに行っても同じようなビルが立ち並び、テナントも同じようなチェーン店ばかり。その街ならではの個性や魅力が失われつつあることに少し寂寥感を覚える。今回取材したフジサワ名店ビルは、まさにローカリティを体現したような場所で、ここでしか味わえない、一つのビル内に時代の異なる店が地層のように堆積した実に興味深いビルだった。またひとつ、昭和の名遺産がなくなってしまうのはとても惜しいが、この名店ビルならではの良さが次世代にも受け継がれ、また藤沢の新たなランドマークに生まれ変わることを期待したい。