第1回 カタクリ

2023/05/12

  「春の妖精」の別名をもつカタクリ。落葉広葉樹林に自生するカタクリは、まだ寒さの残る3月中旬頃から日当たりの良い場所に紅紫色の花をのぞかせ、一足早い春の訪れを告げる。
 千葉県柏市のあけぼの山農業公園では、本館近くの山の斜面に、毎年3月中旬から下旬にかけて約100株のカタクリが花を咲かせる。花茎は10〜15cm、地面に向いた花弁を反り返らせるようにして開くが、この可憐な姿が見られるのはわずか2週間足らず。日差しが弱い日は花は閉じているので、開花に出合えたら幸運だ。
 もともと人の手によって適度に整備された里山に自生していたカタクリだが、近年では天然記念物に指定されている場所も多く、種の保全が叫ばれている。同園では芽が出る前に周囲の落ち葉を掃き、枯れ枝を取り除いてカタクリが育ちやすい環境を整えている。遅咲きの梅や早咲きの桜とともにお目見えするカタクリの花を、心待ちに訪れる人も多い。
 花を咲かせたあとは5月頃までに葉を落とし、枯れて地上から姿を消す。その後長い休眠に入り、地下茎で養分を蓄え、雪解けを待ってふたたび地上に細い葉を伸ばすのだ。跡形もなく消えて春の光と共にそっと姿を現すカタクリは、まさに妖精さながらに短い命のきらめきを放つ。

あけぼの山農業公園

TEL04-7133-8877 千葉県柏市布施2005-2
営業時間/9時〜17時 Pあり JR我孫子駅よりバスで約17分