第2回 飽きさせない船の生活

2008/12/21

24日、寒風の横浜港を出航後、大した揺れも無く、順調な航海が続いています。昨日マニラ、今日は、フィリピンのリゾート、エルニドという、多島海の小島。気温30度以上の真夏で、皮膚が真っ赤に焼けてしまいました。2月1日にシンガポールに入港します。

飛鳥、この「ぢぢばば混載乗合船」が、海と空しか見えない航海の日々、約400名の乗客を、いかに飽きさせないで過ごさせるかに一生懸命神経を使って、 全く多岐に渡るイベントの数々を、一日中、時間刻みで用意し、客の我々は、前夜配布される「アスカ デイリー」という、A3二つ折りの船内新聞で翌日のスケジュールがビッチリ示された中からセレクトして、予定を立て、船内5Fから10Fと屋上を駆け巡り、全く「飽きる」ことなど許されない状態なのです。
 この「寮付きカルチャースクール」の教科を、片端から挙げると、(ショウ、コンサート、食事関係を除き)ストレッチ、デッキウォーク、輪投げゲーム、マジック、押し花、生花のコサージュ作り、ダーツ、気功、シャッフルボード、ピンポン、タガログ語、グラスホルダー作り、社交ダンス、パソコン、パットゴルフ、コントラクトブリッジ、フィリピンダンス、ペタンク、カレンダーフレーム作り、俳画、カジノ、マッサージ、囲碁、等々、まだまだ沢山出てきそうです。 その中でも、人気は、社交ダンスの約180人、パソコンの約170人、と驚異的な賑わいです。さらに、講話でのためになるおはなしの数々.又、客同士の同 好会が次々発足し、太極拳、折り紙、カラオケ、麻雀、コーラス等、さらに、中身が分からないが、マブライペイント、五行歌なんてものから、長生きの秘訣、 ぼけ防止のパズルまで、じっとしていられない日本人、成長期を支えてきた世代の悲しき性(さが)でしょうか。そういうものをギッチリ詰め合わせて、船は洋上を時速約35kmで走り行くのです。

■大合唱‥‥毎日、スケジュールのやりくりを考えるほど、飛鳥の方でイベントを考えてくれるのですが、その講師の中にユニークな方が居られ、星、宇宙、海等の話と、夜、屋上で星 座の説明等がユーモアにあふれ、博識で人気が高いほかに、この方の歌唱指導が又、大人気なのです。歌と言っても、昔の小学唱歌が主で、客層にピッタリの懐かしのメロディーです。村の鍛冶屋、冬の朝、海、われは海の子、旅愁、等々。皆で声高らかに歌うのです。

■船客と船員たち‥‥船客の中には、さまざまな人々がいます。食事の度に、いろいろな人と知り合うのは楽しみでもあり、又、時には煩わしいときもあります。某女優がおしのびで乗っているとかの噂もあります。飛鳥の世界一周6回のうち2〜4回目の人が6〜7割も居て、「この前は」とか「あの時は」とかの話題が飛び交い、我々初めての客は、 肩身が狭いような気さえします。我々のように、なけなし洗いざらいでやっとという者と違い、世の中随分暇とお金がある人が居るものです。最多700泊の人もいました。また、単身での乗船客は女性50人、男性20人で、船側で「出会いの場づくり」として出港直後に単身者を集めたパーティを開いたそうです。

 さて、目下の一番の問題は「食べ過ぎ」。運動の為、早朝のデッキウォーク、ストレッチ、気功、社交ダンス等の教室、夜のダンスパーティーと、励んでいますが、みるみる太ってきたようです。乗客の平均年齢が69.3歳で、まさに、私がピッタリ!最高齢者は88歳です。今回の有料乗客数は、404名。他に、講師、タレント等を含めて約450名に対して、乗組員数270名で、その国籍は16ヶ国、そのうち150人がフィリピン人です。
 たまたま、昨日のマニラ寄航は5年ぶりとか。船会社の計らいで彼らの親族を招待し、船内見学や再会の場作りをして、1200名もの来訪者に開放しました。彼らも訪れた人達も感激的な再会と又別離の場となり、我々も心温まる思いでした。そこで気の付いたこと。一夫多妻が許される社会で、おまけに子沢山、 兄弟8人10人はざらとか。又人口に対し若者の比率が高く、その割に産業が育っていず、働き口が無い。マニラ市内で目立ったのは、ぶらぶらしている男が多い、職安や、米国大使館のヴィザ発行所の前は、大変な人だかり。逆に世界でフィリピン人が重宝がられているのが船員とメイドだとか。事実、飛鳥でも、ウェイターやルームメイドの殆どが彼らで、まじめで、礼儀正しく、何時もにこやかです。日本郵船がマニラに直営の訓練所を設け、かなりの倍率で選考し訓練しているようです。従って飛鳥で働いていることは彼らも家族もおおいに誇りであり、又、良い稼ぎの場なのでしょう。

■クルーズ人口‥‥アメリカのクルーズ人 口はいまや400万人に対し、日本はなんと100分の1の4万人とか(竹村健一氏の話)ですが、アメリカはクルーズの行き先に、カリブの島々やメキシコ、 又、太平洋側ではカナダ、アラスカの景勝地があり、1週間程度の休暇で乗船の機会が得やすいのに比し、日本周辺には魅力ある行き先が少なく、台風シーズンが長く、冬の日本海の荒波等、魅力あるクルーズの設定がしにくいのだと思います。その小さなパイを飛鳥、パシフィックヴィーナス、日本丸等で奪い合っているのです。

■飛鳥とEメール‥‥飛鳥での受信は無料、飛鳥への送信は国内から通常の送信と同じ。又、飛鳥からの発信はA4を10枚ぐらいまで300円で、アドレス数に制限はないとの事です。

 このように飽きることが許されない毎日なのですが、たまにはのんびりボーッとした日も欲しいというわけで、「何もしない日」(ノーアクティヴィティー デー)が2週間に1日設けられています。今日がその日なのですが、このEメールコーナー(7台)も込み合っているし、ホールではダンスを踊りまくっているのです。私も悲しいかな例外でなく、こうしてメールを打っているのですが、この辺で打ち切り、プールサイドのデッキチェアーに寝転びにでも行きますか。ではまた。