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おさんぽ通信

    第8回 栗平駅~川崎フロンターレ麻生グラウンドを歩こう!

    2005/08/17

    1. 栗平駅
    2. サンヨーガーデン
    3. 栗の木が並ぶ道
    4. 鶴川方面の住宅地
    5. カキノキの保存樹木

    6. 櫻屋
    7. 川崎フロンターレ麻生グラウンド
    8. 片平楽農倶楽部
    9. さっきまで歩いていた丘
    10. 白鳥神社

    おさんぽ記

    台風一過の青空が広がるもと、栗平駅(1)に到着。南口を出ていくと、「川崎フロンターレ麻生グラウンドアクセスMAP」が立てられていました。案内によると、「通りを右へ」ですが、電車の窓から見えた鬱蒼とした杜がどうしても気になって、足は左へと進みます。

    住宅街の並木通りを行き、交差点でふと右手を見ると、少し行った先は丘の斜面になっている様子。どうなっているのだろう? と、近づいて行くうちに、対面の緑豊かな丘が視界いっぱいに飛び込んできました。そして、そこには、「乗馬 コノ坂 降りる」と書かれた矢印看板。ふむ、乗馬。行ってみましょう。

    急な坂を降り、通行量が多い道路を横断します。片平川を渡った先の「サンヨーガーデン(2)」の看板を過ぎると、そこには乗馬を楽しむ人々の姿がありました。38頭のサラブレッドの力を借り、初心者からていねいな指導を受けられる乗馬クラブ。まず馬に慣れたい人は引き馬乗馬、またはポニーのめぐちゃんにニンジンをあたえることから始められます。

    「この坂をぐるーっとまわって行くと、川崎フロンターレのグラウンドまで近いよ」という話を聞き、乗馬クラブ沿いにある坂を上ります。途中、迷い込んだ小道の先々には、真っ赤な鳥居のお稲荷さんや入道雲のような植木。行きつ戻りつしながら、やがては栗の木が並ぶくねくね道(3)を歩いて行きました。

    セミの鳴き声がどこまでも続きます。遠くからかすかに電車の走行音が聞こえてきました。畑の土と葉っぱのにおいを胸いっぱいにかいでいると、アゲハチョウがひらひらと舞ってきてはどこかへ飛んでいきます。都県境の尾根道からは、町田市鶴川方面の住宅地(4)が眼下に。涼しい風が汗だらけになった顔をやさしく撫でていきます。

    さて、そろそろ川崎フロンターレのグラウンドに着いてもよさそうなのに、青い芝生のグラウンドはなかなか見えてきません。なにしろ台風一過の炎天下、飲み物の自動販売機も探しているのですが、のどかな景色が続くこのあたりにそういったものは見あたりません。ふぅ〜っと大きな木陰でひと息つき、何の木だろうと見上げてみると、カキノキの保存樹林(5)と書いてありました。

    汗はだくだく、のどはカラカラ、自分の位置がまったくわからない今回のおさんぽ。こんなことだったら、駅前で見たMAPのとおりに歩いてこればよかった……と、好奇心のままに歩を進める自らの行動を呪います。そうして、やっとの思いでたどり着いた櫻屋(6)。この店は川崎フロンターレ麻生グラウンド前にある有名なそば店なのです。

    コップ3杯の水を一気に飲み干して、目の前に並ぶ惣菜と天ざるそばに没頭します。先ほどまでの欠乏状況とは一転し、この豊かすぎるテーブル! ほんとうに心の奥底から感謝しました。そして、いよいよ、川崎フロンターレ麻生グラウンド(7)です。

    川崎フロンターレのホームグラウンドであるこのグラウンドでは選手たちの練習風景が見られます。グラウンド脇のベンチにはファンが訪れ、それらを熱心に見守る様子が印象的です。間近に見る選手たちの表情はみな真剣そのもので、こちらもつい緊張。しかし、クラブハウスに向かう選手が通路でサインや写真撮影に笑顔で応える姿に、ミーハー心がうずうずとうずきます。がんばれ、川崎フロンターレ! と気分は密かに盛り上がるのでした。(練習日程はオフィシャルサイトで確認のこと)

    農園の色鮮やかなラズベリーに導かれ、入っていったのは会員制市民農園の片平楽農倶楽部(8)。おかあさんたちが、「昨日の台風で雨がたくさん降ったから、今日のブルーベリーはおいしいわよ。ちょっと食べてみて」と、かごに山積みされた摘みたてのブルーベリーを差し出します。大きな紫色の粒をぽいっと放り込むと、口の中はあま〜い香りが充満。“応援”でまたまた乾いた喉をやさしく潤してくれました。

    片平川沿いを行き、坂道を上ります。振り返ってみると、さっきまで歩いていた丘(9)が川の向こうにありました。「こっちが乗馬クラブで、あっちがグラウンド。ということは、たぶんグラウンドの近くまで行ったのに、気がつかずに通り過ぎてしまったんだ。あそこからあそこまでずーっと歩いてきたんだなぁ」と、しばし感慨深く眺めます。

    白鳥公園のいっかくにある白鳥神社(10)は鬱蒼とした木々に囲まれていました。境内にはお参りの人が1人、いつまでも手を合わせています。ふと、電車から見た杜はここだったことに気づきました。そして、今日の好奇心がすべて満たされたことに満足し、足は駅へと向かったのでした(今度は水筒を持って行こう)。

    おさんぽクローズアップ!!

    「櫻屋」

    茅葺き屋根が目印のそば店。各テーブルの上に惣菜やフルーツが19種類並び、店の中央には冷え冷えの冷や奴とアツアツのエビ汁が。どれも自由に好きなだけ食べてよく、素朴な味わいでなんとも心に染み渡ります。
    名物天ざるそばのそばは喉ごしがよく、風味豊か。そして、天ぷらはこれまたびっくり、なんと16種類。お腹いっぱい食べられて、そのうえ、コーヒーとおしるこのサービスも。さすが、口コミで広まった名物店!(サービス品は日によって変わります)


    ■ 044-989-2776
    ■ 川崎市麻生区片平1539
    ■ 10時半〜14時(13時半ラストオーダー)
    ■ 月・第3火曜休
    ■ 天ざるそば1800円

    「片平楽農倶楽部」

    会員制市民農園。からだにやさしい野菜作りを目指しており、土・日曜には野菜の直売を行っています。栄養満点のウコッケイの卵もあり、1個300円という格安のお値段がうれしいです。
    また、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーのジャムを手作りして販売。添加物が入ってないため、「まじりけのないおいしさ!」と評判です。柿のジャム、かぼちゃのジャムなど、めずらしいものもあります。


    ■ 044-986-1412
    ■ 川崎市麻生区片平1527-12
    ■ 8時〜17時
    ■ 月曜休(月が祝の場合は翌日休)

    ※ 平成17年(2005)7月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。