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おさんぽ通信

    第31回 柿生駅~麻生川~恩廻公園調節池を歩こう!

    2007/06/01
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    1. 柿生駅
    2. バス専用折り返し所
    3. 麻生川
    4. 麻生水処理センター

    5. 子ガモ
    6. 鶴見川と合流
    7. 恩廻公園
    8. 恩廻公園調節池

    おさんぽ記

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    バスロータリーまで歩いて、またびっくり。バス乗り場が通りを渡った先のバス専用折り返し所(2)へ移動しており、ロータリーはもぬけの殻。おさんぽ通信  第18回柿生駅〜三輪町を歩こう!の際に見つけたバス時刻表の上に貼り付けられた時計も、跡形なく取り外されています。「柿生駅前の歩行環境改善」のた めとのことで、駅前商店街通りの誘導員さんによる見事な“バスさばき”はもう見られません。









    新しいバス乗り場から並木道を下り、この通りはどこへ通じているのだろう? 以前と少しだけ変わってしまった風景に大きく戸惑いながら、駅前商店街通りと の交差点に辿り着き、なるほど、ここかぁ。知っている風景に再会できて、ほっとひと安心。そうとなれば、以前歩いた道とはちがう小田急線沿いの道へ進みましょう。

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    もうすぐ夏本番を迎える季節、どんよりした曇りの日が続きます。おさんぽはやっぱりお天気がいい日にでかけたいなと、天気予報で晴れマークを確認して出 発! ……したつもりなのに、見上げると空は灰色。今日は降らないはずだよね? と心配になり始めたころ、麻生川(3)が現れました。「河川管理境界」と 書かれた看板が立てられ、「←一級河川 麻生川 神奈川県川崎治水事務所」「準用河川 麻生川 川崎市建設局→」。線路の下をくぐり抜けた麻生川はここか ら一級河川です。

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    川をのぞき込みながら行くと、たくさんの黒いコイ。しかも、まるまると太っているのが多くいます。そして、その立派な魚体に対して川の水かさがちょっと少 ないようで、水面から背びれが出ているコイも。もしも川が干上がってしまったらどんな光景になるのだろうと考えたところで、ぽつん、ぽつんと雨が降ってきました。

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    「雨、降ってきちゃいましたね」と先を急いでいたのは、麻生水処理センター(4)の前で会った女性。「←あさおふれあいの丘公園 近道」の標示板に従うと 緑道が続いており、落ちてきた雨にいきいきと身を躍らせる草木の葉が目に飛び込んできました。水処理施設の屋上を利用したあさおふれあいの丘などの周辺の 広場では大人や子どもたちがソフトボールやサッカーの試合を行っていて、降ってきた雨にはいっこうにお構いなしといった様子。大きな声をあげながらプレイ を続行しています。

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    昭和60年(1985)、この施設の工事現場からコナラを始め7種類の巨大な埋没樹が大量に発掘。それらは約2500〜3000年前に麻生川や鶴見川が運 んだ流木群で、麻生沖積層に堆積したものと言われます。果実、種子、葉などの植物遺体や花粉化石、貝化石も一緒に採取され、分析によって植物相の移り変わ りも明らかになったと説明版。その横に屋外展示された埋没樹はいかにも歴史を刻んできたことを証明するかのような木肌なのでした。

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    散策路を歩き、周辺の住宅街へも足を伸ばします。豊かな緑に囲まれて静かに流れていたのは藤ノ木川。フェンス沿いをどこまでも行くと、麻生水処理センター の広場へぐるりと一周。雨水調整池の見晴台から雨に濡れて映える緑を眺め、雨の日のおさんぽもいいものだなあ……。聞こえてくるのは、しとしとしとしと、 雨の音のみです。

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    仲野橋から再び麻生川沿いへ。新三輪橋を過ぎて、雨が降ってきたせいか、さっきより水の量が増えたような気がすると川の水面を見れば、1羽のカモと1羽の 子ガモ(5)。親ガモの後をピィピィ鳴きながらついて行く子ガモに見とれていたら、「あっちに、もっといますよー!」と対岸で指さす女性の声。どれどれと 行ってみると、川岸に1羽のカモと7羽の子ガモ。全員そろって毛づくろいする姿は微笑ましいばかりでした。

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    麻生川は亀井橋付近で鶴見川と合流(6)。町田市上小山田を水源とする鶴見川は川崎市、横浜市を通って東京湾へ流れる全長42.5kmの一級河川です。麻 生橋を渡ったところにあるのは恩廻公園(7)。以前、鶴見川はこのあたりを蛇行していましたが、昭和48年(1973)から始められた河川工事で現在のよ うなまっすぐな流れに改修され、かつての河川敷地は公園として整備されました。

    向かいの広い敷地には恩廻公園調節池(8)の管理棟。1階には調節池の仕組みを紹介する展示室があります。ビデオと模型による説明を聞いて、 へぇー! とおもわず声をあげてしまったのは、先ほどの恩廻公園の地下25mに直径15.4〜16.5mのトンネルが600mにわたって造られているこ と。直径16.5mというと、東京湾横断道路トンネルの直径11.9mより大きく、日本でも最大級を誇ります。

    「このあたりは大雨が降るとよく洪水の被害に遭い、農家の小屋などにはボートが備えられていたそうです。地下のトンネルには鶴見川が増水した際 に水が流れ込むようになっており、25mプール約330杯分の水が溜められるんですよ」と、係員の方。完成して4年で、まだ一度もトンネルに水が入ったこ とはないという話を聞き、あーよかった。備えあれば憂いなしで、なんと頼もしい存在なのだろうと思いながら、本降りになってきた雨の中を帰りました。

    おさんぽクローズアップ!!

    「恩廻公園調節池(おんまわしこうえんちょうせつち)」

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    1時間に60mmの雨(10年に1度の確率)が降っても、ある程度の水を一時的に溜めておくことで鶴見川の氾濫を防ぐように造られた施設。平 成5年(1993)から10年かかり、平成15年(2003)に完成。トンネルに溜められた水は川の水位が下がってからポンプで汲み上げ、鶴見川へ戻され るそうです。
    トンネル内は河川や水害に対する理解を深めるための団体見学が可能。見学希望日の1か月前までに施設見学申込書の提出が必要です。詳しくは川崎治水事務所へ問い合わせてください。
    また、鶴見川流域ではクリーンアップ活動やスタンプラリーなどのウォーキングイベントが1年を通して活発。川沿いの自然にもっとふれてみるのも楽しそうです。


    恩廻公園調節池 展示室
    ■ 8:30〜17:00
    ■ 月曜休(祝日の場合は翌日休)

    川崎治水事務所
    ■ 044-932-7211

    ※ 平成19年(2007)6月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。