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おさんぽ通信

    第20回 籠口の池公園~早野聖地公園を歩こう!

    2006/07/01
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    1. 籠口の池公園
    2. 道しるべ
    3. イルフェジュール
    4. 石塔

    5. 早野聖地公園
    6. 木の橋
    7. 炭窯小屋
    8. 農作地

    おさんぽ記

    じっとりとした暑さのなか、四方八方に枝葉を伸ばす木々の下に飛び込むと、すーっと体感温度が低くなっていきます。はぁ〜とひと息つくのもつかの間、どこ からともなくやってくる蚊の大群。手足を小刻みに動かしながら、急ぎ足で駆け抜ける籠口の池公園(1)から、今回はスタートです。

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    籠口の池は雑木林に囲まれた自然の池で、かつては下麻生に広がる田んぼの潅漑用溜池として大切な役割を果たしていました。現在は雨水の調整池となり、まわ りに植えられた桜が花見の時期に人々を喜ばせます。散策路のあちこちにキノコがにょきにょき生えているので、じっくり観察したいところですが、すさまじい 蚊の襲撃に、ほうほうのていで逃げ出しました。

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    地下水路が流れる畑沿いの道を行けば、足下からちょろちょろと清らかな水の音。さらに耳をかたむけたら、それらは水路のなかで反響し合っていて、なんとも 涼しげな合唱。みずみずしく光るトマトやキュウリを見ながら交差点に出たところで、「北 生田登戸」「東 王禅寺」「南 市ヶ尾」と書かれた石柱の道しる べ(2)を見つけます。

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    北の方角に、サーモンピンクの壁にフランス国旗がかかったお店。木の扉を開けて入ると、陽気なアコーディオン演奏曲が踊るフランス菓子店のイルフェジュー ル(3)でした。ショーケースに並んだケーキの数々はきらきらと輝き、まるで宝石のよう。おもわず喉がごくんとなります。でも、おさんぽはまだ始まったば かり。おみやげを買うには早いので、後ろ髪をひかれながら「さようなら〜」。

    交差点に引き返し、そのまま直進。途中、説明板「川崎歴史ガイド」の「下麻生学校と青戸四郎右衛門」「等海上人と禅寺丸柿」を読みます。石橋交差点 でふと気づいた石塔(4)。先ほどの石柱と同じく、時の流れを感じさせる静かなたたずまいに、心は穏やかになっていくのでした。

    と、野川柿生線をゆっくり歩き始めたら、クルマがわが身をすれすれに走り抜けていくので、うわぁ〜と、びっくり。歩道がないところがあるので、夢中になってぐんぐん歩きます。早野聖地公園への案内看板に従って通りを曲がったところで、やれやれと額の汗を拭いました。
     

    畑にはさまれた通りの突き当たりに、林ヶ谷池。水上を飛んでいくトンボを眺め、早野聖地公園(5)のなかへ。ここ早野の地は稗(ひえ)が生える 野原だったそうで、「ひえの」が地名「はやの」に転じたという説があります。水不足に悩む農地に先人たちが7つの溜池を作り、稲作に利用。籠口の池と同 様、現在もその姿を残し、人々の心を潤しています。

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    公園は市営の霊園として整備され、以前は田んぼだった谷戸にお墓がずらり。おもしろい風景だなと思いながら中ノ谷池、龍ヶ谷池とまわり、青々とした葉が映 る水面に涼しさを見つけます。そして、次に現れた堤入池では、岸に積まれた石の上にとぐろを巻いているヘビ。さーっと背中がますます涼しくなり、あわてて 頭上に見える木の橋(6)へ。

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    虹ヶ丘小学校の校庭沿いを行き、再び公園内の雑木林に突入。案内標識の「聖地公園」の方へ進むと、細い山道はどこまでも続き、林は深くなるばかり。何度も 顔にクモの巣を受けたり、足を滑らせそうになったり、探検気分は徐々に薄れて、不安でいっぱいに。そのとき、救いの案内標識「炭窯小屋(7)」を発見。

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    「伐採した木や竹を1月から2月にかけて炭焼きするんですよ。できた炭は年2回のお彼岸の日に公園の事務所の前で希望者にお分けし、道具購入などの活動資 金にさせていただいています。バーベキュー用にする人もいるし、竹炭だったらお部屋に置いて空気清浄用に、お米と一緒に炊くとごはんがおいしくなるし、使 い方はいろいろですね」。蚊取り線香を腰にぶら下げた「早野聖地公園里山ボランティア」の人が親切に教えてくれました。

    「下草を刈って、花や野菜の苗を植えて。以前、林のなかは草木が生い茂って歩けないほど荒れていたけど、今では野草のキンラン、ギンランも見かけるまでに なりました。秋は芋煮会、暮れは餅つきをして、楽しいですよ」。里山の自然が広がるハンノキ林を眺めながら上池まで。折り返して、五郎池までのんびりのん びり歩き、「んごぉ!」と、ウシガエルの大きな声に見送られました。

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    農業振興地域として指定されている早野の農作地(8)。トマト、キュウリ、ナスといった夏野菜が実をいっぱいつけてぶら下がっています。驚いたのは、大きなスイカもぶら下がっていたこと。スイカは地面にあるものと思っていましたが、おいしくなるための栽培法かな?

    林ヶ谷池へと戻り、めぐってきた池を数えてみます。あ、あれ? 早野の池は7つのはずだけど、6つ? あと1つはどこにあったんだろう? ……と思ったものの、あの「きらきら」が私を呼んでいて、またまた急ぎ足。そう、イルフェジュールへ戻りまーす!

    おさんぽクローズアップ!!

    Il Fait Jour(イルフェジュール)

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    卵は朝どり産地直送の鳳凰卵、バニラはタヒチ産の最高級、塩はフランス・ブルターニュ地方産天然のゲランド塩などなど、素材はこだわって厳選。
    フルーツも季節の新鮮なものだけを使用し、夏は桃やリュバーブ(シベリア原産の多年草。すっぱくて、最近ではジャムとして人気急上昇中)、秋には巨峰やラ・フランスなどへ。 毎週水曜には「ケーキ屋さんのパン」と題して、クロワッサンやパン・オ・ショコラなどを限定販売しています。
    このお店、じつはシェフのお父さまのケーキ店を改装して再オープン。お父さまによるカフェロールやプティフールも根強い人気があり、大評判のお味なのです。

    ■ 044-987-3120
    ■ 川崎市麻生区下麻生2-29-8
    ■ 10時〜20時
    ■ 月曜休(祝日の場合は翌日休)

    ※ 平成18年(2006)7月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。