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おさんぽ通信

    第43回 五月台駅~片平川~栗平駅を歩こう!

    2008/06/30
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    1. 五月台駅
    2. 片平川
    3. 畑の中の道
    4. 保存樹林のカキノキ
    5. 仲堰跡

    6. 湯快爽快くりひら
    7. 大堰跡
    8. 片平川の終点
    9. 栗平駅

    おさんぽ記

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    小田急多摩線五月台駅(1)は丘の上に建つ駅。南口駅前から続くイチョウ並木は緩やかな下り坂で、ほどよい木陰のなかを片平公園そばの交差点まで行くと、坂はがくんと急勾配。下るうちにスピードがついておっとっと、とならないように、足を少し踏んばって慎重に進みます。

    片平老人いこいの家と片平こども文化センターの建物の前を通り、県道上麻生蓮光寺線の片平小入口交差点を横断。片平川のさらさらと流れる水の音が近づいてきて、川向こうの雑木林からはウグイスが「ホーホケキョ!」と迎えてくれます。中央橋の真ん中に立って片平川(2)と再会。水の流れにしばし見とれます。

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    左手に畑の中へ入っていく急な上り坂。この道は通っていいのかなと迷っていると、坂上から日傘を差した女性2人。「いつも買い物の行き帰りに利用していますよ。市道だから大丈夫」と教えてくれました。この畑の中の道(3)は舗装されていなく、土と草の香りが充満。畑に植えられた花や木には白い小さな札が掛けられ、「ききょう」「紫苑」「クレマチス」「桜蓼」「花水木」などと記されています。

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    トラクターの男性に「もっと先まで行けるよ」と言われて着いたのは、右手に川崎田園都市病院を望む草はら。後方に建つ麻生総合高校からは元気な掛け声「1! 2! 3! 4! オーエス!」や、発声練習中のピアノ&歌声「♪あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜」が風にのって耳に届きます。先ほど歩いていた五月台駅の丘を正面に眺め、深呼吸。気持ちいい〜!

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    草はらを後にして民家のあいだを抜けていくと、竹林とあじさいの道。ん? いつか来た道? と上っていくと、第8回栗平駅〜川崎フロンターレ麻生グラウンドを歩こう!で道に迷ってたどり着いた保存樹林のカキノキ(4)。あのときと同じように大きな木陰でひと休みします。

    片平川へ戻り、今度はサクラの木に「あ!」。木の下に仲堰跡(5)を見つけたのです。昔、片平川周辺は水の便が悪く、田んぼに水を引くための堰は重要な役割を担っていました。堰を築き、守り続けた人々の苦労は並大抵ではなく、片平川の河川改修によって堰が撤去された後も先人たちのたゆまぬ努力に感謝の意を表そうと、仲堰跡には石碑が立てられました。

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    前回、柿生小学校のそばで熊野堰跡、中町橋のそばで仲町堰跡を発見したように、片平には7ヶ所の堰跡があります。仲堰跡以外の6ヶ所には片平老人クラブによる句碑がサクラの木とともに建立。地域の歴史を今に伝えています。


    また、片平には7つの堰だけでなく、7つの橋、7つの台(丘)、7つの字、7つの谷戸、7つの社、7つの塞神がありました。それぞれが偶然にも同じ数だけ揃っていたので「片平の七不思議」といわれていたそうです。七不思議のすべてを探すのは、さぞかし探しがいがあるだろうと思いながら、とりあえず、7堰のうちの残り4堰はどこだろうと歩を進めます。

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    右手に見えてきたのは湯快爽快くりひら(6)。汗を流しにちょいと寄りたい気分ですが、ここはぐっとがまん。金井原橋の近くで金井原堰跡、その少し先で大堰跡(7)を発見し、「田水引く 時を待つ間の 蛍かな(片平老人クラブ)」と句碑に刻まれた句を読みます。

    左手に常念寺が現れたところで、おっと、片平川の終点(8)です。川の終点って初めて見たなあ……ときょろきょろすると、通りを隔てたテニスコートの横に蓋つきの水路らしきもの。この先がどうなっているのか知りたくて、テニスコートの向こう側へ。栗木調整池の手前70メートルあたりまで水路を追いかけましたが、そこからは道路の下に潜ってしまいました。

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    「私がお嫁に来たのは昭和28年(1953)で、店の前はまだ砂利道でしたよ」と話してくれたのは、「創業慶応元年」の看板を掛ける飯草酒店本店の奥さん。お店は潜った水路のすぐ近くにあります。「水がちょろちょろと生い茂った草の間を流れていて、雨が降ると堰にたまっていたのは覚えていますね」。

    片平川へ再び戻って、いちばん上流の亀井堰跡を発見。あと1堰は? というと、かつて葉積川と呼ばれていた麻生川の麻生橋近くとのこと。栗平駅(9)へと向かったものの、どうしても汗を流したくなって、湯快爽快くりひらへの送迎バスにひらり。片平の七不思議めぐりは簡単には終わらないのでした。

    おさんぽクローズアップ!!

    「湯快爽快くりひら」

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    肌がなめらかになるという褐色の重曹泉が心身ともに癒してくれる日帰り温泉。 源泉掛け流しの「野天元湯風呂」をはじめ、岩風呂、ひのき風呂、寝湯、壺湯など、さまざまな風呂で天然温泉を楽しめます。

    岩盤浴、韓国式アカスリ、タイ古式療法などのリラクゼーション施設が揃うほか、座敷や囲炉裏などで料理やデザートをゆっくりと味わえる食事処もあります。

    食事処のそばに設けられた足湯は、とくに足の疲れを癒したい“おさんぽ帰り”にとって嬉しいかぎり。足湯でとことんリラックスしたら、縁側に座って庭をのんびり眺めるのもおすすめです。

    ■ 044-989-2644

    ■ 川崎市麻生区片平8-2-1

    ■ 9時〜深夜1時(最終受付は深夜0時半まで)

    ■ 大人

        平日会員800円

        一般900円

        土休日会員950円

        一般1050円

    ■ 3歳〜小学生

        平日400円、土休日500円

        ※ 平成20年(2008)6月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。