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おさんぽ通信

    第19回 新百合ヶ丘駅~金程・千代ヶ丘を歩こう!

    2006/06/01
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    1. 新百合ヶ丘駅
    2. 十二神社
    3. 蚕影山(こかげさん)
    4. じゃがいも畑
    5. 向原弁天公園

    6. 金程万葉苑
    7. 富士見バーベキューセンター
    8. 勝坂
    9. 寺子屋跡
    10. Passion do Soup

    おさんぽ記

    どよんと濁った曇り空をバックに建つ小田急線新百合ヶ丘駅(1)の北口から、今日のおさんぽはスタート。少しずつ薄日が差し始めて、暑くなりそうな気配です。

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    世田谷通りとぶつかった交差点で右の方向を見上げると、十二神社(2)の真新しい鳥居と階段。神社を一角とする万福寺地域の土地区画整理事業は平成19年春を完成予定として、現在、急ピッチで工事が進められているところ。先陣を切って再建された社殿は、長いこと見守ってきた地域の新たな門出を心待ちにしているように、ぴかぴかと輝いています。

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    何段もの階段をのぼり、広々とした境内から工事の様子を眺めた後、社殿のまわりをうろうろ。狛犬や手水鉢、燈籠などは「大正5年4月」などと彫られた以前のものがそのまま配され、新旧入り混じった神社の風景。駅周辺から聞こえてくる喧騒が遠くに感じられます。

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    歩道沿いに連なった万福寺の完成予想図を見ながら、生まれたばかりの並木道を歩きます。徐々に道幅が狭くなり、まわりはいつしか住宅街に。カツラ並木が続く通りにぶつかり、左へ行った交差点の木の陰に、「金程万葉苑→」の看板がありました。

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    矢印に従った通りの右手に鬱蒼とした森、左手に「永久の故郷」と書かれた石碑と蚕影山(3)の社。幕末の横浜開港によって生糸産業が活発になった際、ここ金程村にも養蚕農家が一気に増えました。養蚕安全を願う蚕影山が信仰され、茨城県筑波より蚕影神社を勧請。その後、昭和初期の戦争などにより養蚕農家は姿を消しましたが、この土地の農業史を伝えるべく、土地区画整理事業時に蚕影山を現在の場所に移転し、祀られたと説明板に書かれていました。

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    子どもたちの元気な声が聞こえてきます。ずいぶんにぎやかだなぁと行ってみると、ちよがおか幼稚園とこうりんじ幼稚園の園児たちがどこかへおでかけ。長ぐつ姿の行列の後ろにくっついて、着いた先はじゃがいも畑(4)。農家の人たちに手伝ってもらいながら、小さな手が土をよいしょと掘り起こすたびに、大小のじゃがいもがごろごろごろ。「いっぱい、じゃがいも、みつけたー!」と歓声があがります。

    歩きながら見れば、ぶどう、梅、柿の木などの畑があちこちに。果実をたわわにつけているものもあり、ふしぎと安心感をおぼえます。昔、このあたりに、潅漑用水のために造られた「向原の池」という大きな池がありました。向原弁天公園(5)には、池の守護神として祀られていた弁才天が今も残されています。先ほどの蚕影山と同じように地域の人々によって移されてきたものです。

    土地区画整理事業において緑地保全地とされ、多摩丘陵の野生植物や万葉集に詠まれている植物を植栽しているのは金程万葉苑(6)。散策路に沿ってハギ、センダン、ユズリハ、スギ、ヤマザクラといった植物に万葉の歌が添えられ、ほかとはちがった仕方の植物観賞を楽しめます。

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    金程万葉苑の森のなかでひいた汗が再び噴き出してきたころ、富士見バーベキューセンター(7)の看板に出会いました。その看板の裏側の「毎度ありがとうございます」の文字と、通路にぶら下がったビール会社のちょうちんが “昭和”を彷彿とさせます。バーベキューでビールをぐいっといきたいところでしたが、お店は留守のようす。後日聞いたところによると、お店を閉めてしまう予定があるとのこと。この風景がなくなってしまうのは、なんとも残念です。

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    千代ヶ丘トンネルの上を横切る道に、「歴史と文化の散策路」の立て看板。何があるのかな?と歩いていくと、新百合ヶ丘駅や平尾、栗平方面を見わたす眺望が目の前に広がりました。そして、大きな木の下に、史跡・勝坂(8)の説明板。上杉氏と北条氏の戦いで、勝った北条早雲の孫、弱冠16歳の氏康が「勝った! 勝った!」と喜び、かけのぼった坂だとありました。

    それにしても暑いなぁと坂をくだってきたところに、寺子屋跡(9)。地域の風景は変化しつつも、歴史は大切に伝えられていくものなんだ、十二神社も再建されたし……と、工事中の万福寺へと戻って行きます。



    新百合ヶ丘駅までもうすぐのビルの谷間に、オレンジ色に燃えるワゴンが止まっていました。お? とのぞいてみると、手作りのシチューやスープをテイクアウトできる「走る!洋食屋さん♪」のPassion do Soup(10)。暑い日には、あつ〜いシチューで栄養補給! 汗をかきかき、もりもり食べて、夏バテ防止といきましょう。

    おさんぽクローズアップ!!

    「Passion do Soup(パッション・ド・スープ)」

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    料理歴20年のシェフが無添加の素材と手作りにこだわったシチューとスープ。
    オフィスや近隣の主婦たちに口コミで評判が広がり、とくにクリームシチューは感動的なおいしさ! と週に数回買いに通う人がいるというほど(ほんとうにびっくりするほどおいしかった!)。
    日替わりのセットメニューは、例えばA.国産とろとろビーフシチュー、B.若鶏のチーズ入りクリームシチュー、C.ジャワ風マサラカレーから選び、パンまたはライスと、サラダまたはデザートが付いて700円。
    パンはシェフによる焼きたてバターロール。サラダやデザートにもこだわりは変わらず、ドレッシングまでもちろん手作りです。
    オムライス、タコライスなどの曜日替わりメニューのほか、冷たいスープやスパゲティなど季節メニューも登場します。


    ■ 火〜金曜の11時半〜13時半 営業

    ※ 平成18年(2006)6月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。