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おさんぽ通信

    第34回 早野停留所~子ノ神社~寺家ふるさと村「四季の家」を歩こう!

    2007/09/20
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    1. 早野停留所
    2. 殿様の墓
    3. 戒翁寺
    4. お地蔵様
    5. 子ノ神社

    6. ケヤキの道
    7. 彼岸花の群生地
    8. 下麻生緑道
    9. 竹細工・長谷川
    10. 寺家ふるさと村「四季の家」

    おさんぽ記

    横浜上麻生道路を走るバスに揺られて着いた早野停留所(1)。すぐそばに早野交差点があり、早野聖地公園へ向かう道の角には墓石を取り扱う石材店が建っています。その角を右折して、少し歩いた先をさらに右折。畑に囲まれた道を行きます。

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    畑には花びらがちらほらと開き始めたコスモス。清々しい音を奏でながら流れる水路にはトンボがふわりふわりと飛び交っています。つきあたりまで行って見つけたのは茅葺き屋根の小屋。まわりには赤い彼岸花が咲いています。

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    今回おさんぽした日は秋のお彼岸の真っ只中。今年は暑い日がいつまでも続いていたので開花時期に影響しないのかなと考えましたが、近くで農 作業をしていた方が「彼岸花は人間より正直だよ。ちゃーんとお彼岸に咲くんだからね」。ふうむ、彼岸花は気候の変化にちょっとやそっとじゃ惑わされないよ うです。「白いのはめずらしいだろ? ほかからもらってきて植えたんだ」。農家の庭先に白い彼岸花が陽の光をたっぷり浴びて、輝いていました。

    上り坂の左手、畑の奥にいくつかの石塔。標示板に「殿様の墓(2)→」とあります。階段を上って行ってみると、竹林に囲まれた小高い丘の上に高さ2メートルの五輪塔が4基。威風堂々とした姿で、なるほど「殿様の墓」と呼び親しまれているのも納得です。

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    手を合わせてから引き返し、コスモス畑の向こうに見えたのは戒翁寺(3)。戦国時代に建てられた草庵を寺の起こりとし、寛永年間(1624〜1643)に 富永重吉が堂宇を再建して開基しました。石柱に書かれた「不許葷酒入山門(くんしゅさんもんにいるをゆるさず)」は修行の妨げになる葷と酒を持ち込んでは ならないという意味。葷とはネギ、ニラ、ニンニクといった臭いの強い食べもののことだそうです。

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    横穴のある崖に挟まれた道を通り抜け、再び畑の中を行きます。葉にモンシロチョウが集うブロッコリー、茎が太く成長したサトイモ、緑からオレンジへ色を変 えつつある柿の実。さまざまな虫の声が響き、農家の軒先にはタマネギが吊されています。稲刈りが終わった田んぼを眺めながら歩いて行くと、お地蔵様(4) を見つけました。

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    「大国主命(おおくにぬしのみこと)が親神の素戔嗚尊(すさのおのみこと)から野火の試練を受けたとき、1匹のネズミが現れて洞穴の中へ導い た」ことで神社名となった子ノ神社(5)。広い境内には庚申塔や供養塔が祀られています。「高津村字二子 石工 小俣庄右エ門」と作者名が刻まれた狛犬は どこかユニークな顔立ち。今まで見たものと雰囲気がちょっとちがいます(どこがちがうんだろう?)。

    団地を横目に進み、路地へ入り込んで十数歩。両側にケヤキの木がそびえ始め、風景がケヤキの道(6)へと変化していきました。散歩中の熟年夫婦 が「すごいケヤキの木だねぇー」とため息をつけば、作業着姿のおとうさんも「ここまで幹が太くなるには相当な年月が必要だよね」と頭上を仰いで行きます。

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    路地はあちらこちらに彼岸花が咲く畑沿いの小道へと続き、はっと気がつくと、目を疑うほど鮮やかな彼岸花の群生地(7)。梅林の足下を真っ赤なじゅうたん がどこまでも覆っています。時刻はちょうど小学校の下校時間。彼岸花の横を子どもたちが帰って行く後ろ姿に、なぜか懐かしさを覚えました。

    畑のまわりを一周してそのまま小道を行き、横浜上麻生道路へ。車に注意しながら横断し、「下麻生緑道(8)」の案内板を見つけます。ターザンロープの遊具 が無造作に置かれた緑道を歩き始めて桜の木の先へ進むと、緑道はなんと行き止まり。ベンチが3台あり、1人で静かに過ごしたいときは特等席になりそうな場 所だなあと見ます。

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     来た道を引き返し、横浜上麻生道路へ出たところに竹細工・長谷川(9)。お店のまわりに竹で編んだ大きなかごや籐の椅子などが並べられ、店内にはどんなも のがあるのだろうとそそられます。「いろいろと揃えているので、初めて来た人は驚きますね」と竹細工や籐製品に囲まれたお店の奥さん。とても気さくな方 で、次々と品物についてわかりやすく教えてくれます。「こういった自然素材のものが1つでも家の中にあると落ち着くし、心も穏やかになるのよね」。

     横浜上麻生道路を歩き、「寺家ふるさと村」への寺家橋の前でぴたり。以前、「おさんぽ通信 第7回寺家ふるさと村を歩こう!」で訪れたのは梅雨時で、田んぼは一面緑色でした。……もう稲刈りは終わったかなあ? よし、ここまで来たからには行ってみよう。

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    夕闇がせまる寺家ふるさと村の谷戸。こちらも稲刈りが終わってすっかり秋の風景。寺家ふるさと村「四季の家」(10)までぷらぷらと足を運び、和食レスト ラン「寺家乃鰻寮」が07年4月に新規オープンしたことを知ります。季節のメニューをのぞき込めば、「きのこそば」「和テイストスイートポテト」……。レ ストランのメニューでも秋を実感したのでした。

    おさんぽクローズアップ!!

    「竹細工 長谷川」

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    ざる、せいろ、おひつ、お弁当箱、鬼おろし(大根おろし)、かごなど手作りの竹細工、籐の椅子、収納バスケット、あけびやぶどう、くるみの手提げかご、木製のおもちゃ、スプーン、箸など、自然素材のぬくもりがたっぷりの工芸品がいっぱい。

    ていねいにしっかりと作られたものばかりなので、どれも丈夫で長く愛用でき、とくにあけびやぶどうの手提げかごは使えば使うほどツヤが出るとファンが多く、遠方からも来店するひとが多いそうです。

    ■ 044-988-6385

    ■ 川崎市麻生区下麻生3-46-10

    ■ 10:00〜18:00

    ■ 不定休

         ※ 平成19年(2007)9月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。