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おさんぽ通信

    第39回 聖マリアンナ医科大学病院~生田緑地を歩こう!

    2008/02/28
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    1. 聖マリアンナ医科大学病院
    2. 岸井梅園
    3. 長沢自治会会館
    4. 菅生釣堀園

    5. 秋月院
    6. 東京都水道局長沢浄水場
    7. 生田緑地 梅園

    おさんぽ記

    聖マリアンナ医科大学病院(1)のバスロータリーに到着。正面玄関にはお客さんを待つタクシーが長い列を作っています。周辺に薬局、コンビニエンススト ア、飲食店が並ぶなか、おさんぽ通信 第14回生田駅〜聖マリアンナ医科大学病院を歩こう!でお邪魔したベーカリー「マルグレーテ」と再会。そういえばあ のとき、近くにあった梅園を「開花が楽しみですねぇ」と通りがかりのおばあちゃんと眺めたっけと思い出し、もしかして今ごろ満開? と足を向けます。


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    途中の家の門の上に白梅。きれいに咲き揃っているのを見て、期待が膨らみます。確か、あのへんだったと首を伸ばしながら進んでいくと、ありました! やりました! 白い花をつけた梅が満開です。近づくうちに甘い香りもぷ〜んと漂ってきます。

    梅の木の下でちょうど作業をしている方がいました。「ここは岸井梅園(2)。持ち主の岸井富蔵さんは『梅博士』って呼ばれているんだよ。小梅や 白加賀など約10種100〜120本が植えられていて、咲き始めは2月中旬、見頃は3月10日ぐらいまでかなあ。木によってゆっくり咲くのもあるけど ね」。

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    5月下旬から6月中旬には梅の実が収穫され、その時期に梅園に訪れると購入することもできるそうです。「梅干しや梅酒を作るのに楽しみにしている人が多い ね。あっ、見てごらん、メジロだよ。木から木へ飛びまわって、梅の花の蜜を吸っているんだ」。白い花の間から抹茶色の顔と羽を見せるメジロ。梅の木にいる 緑の鳥はウグイスだと思っていたら、あ〜ら、大まちがいでした。

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    聖マリアンナ医科大学病院まで戻り、坂を上っていきます。病院の建物の後ろの丘には、聖マリアンナ医科大学の真っ白な新校舎。2008年2月に完成したばかりで、4月からこちらの校舎を使って講義が行われるそうです。

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    住宅街へ進むと、庭先に紅梅。塀から顔をのぞかせているジンチョウゲの赤紫のつぼみが今にも開きそうです。宅地造成中のショベルカーがガタガタと揺れてい るのを横目に細い坂道を下り、浄水場通りの手前で長沢自治会会館(3)とばったり。「明治時代より利用されてきた旧長沢クラブは県道生田横浜線(浄水場通 り)の工事にともない、昭和23年に現在の場所に移築」などと書かれた記念碑の隣には、「大山講」と刻まれた石灯篭が立てられています。

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    碑によると、石灯籠はもともとこの場所に大山参りの道しるべとして置かれ、疱瘡神も祀られていたとのこと。いっしょに並んでいる石仏がきっとその疱瘡神でしょう。近くの駐車場には庚申塔と馬頭観世音も並び、ここは古くから人々が行き来していた場所なんだなあと思わせます。

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    菅生釣堀園(4)は昭和45年(1970)に開園。「うちは先祖伝来250年の農家。このへんの低いところはみんな田んぼだったんだよ」とご主人。入口に は1本の白梅が咲いています。「あれは早生なんだ。梅の実は6〜7kg獲れるかな。去年は2kgぐらいだったけどね。梅酒を作るっていうお客さんがいる と、早い者勝ちで持っていってもらうんだ」。

    長沢交差点を左折し、秋月院交差点を横断。秋月院(5)の掲示板に「梅がきれいに咲いています。お参りがてらご覧下さい」と貼り紙されているのを 見つけます。境内に入ると、お堂の右側に満開の白梅、左側につぼみの紅梅。お寺の方が「いっせいに咲くのではなく、こっちの花、あっちの花と種類によって 梅や桜が咲いていくので、散歩のついでに寄っていただくのにちょうどいいお寺ですよ」と教えてくれました。

    境内をゆっくり散策してから住宅街の道を行き、坂を上ります。どこまでも続く塀のなかに東京都水道局長沢浄水場(6)の建物が見えてきました。 昭和32年(1957)、日本武道館や京都タワービルを設計したことで知られる建築家・山田守氏によって完成されたもの。外観の右側部分に見られるラッパ 状の柱と上部が丸く縁取られた窓が特徴的です。

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    浄水場通りの方へ少し行ったところに、しだれ梅。少しおさんぽしただけで、こんなにたくさんの梅の花に会えるとは嬉しいなあと思いながら、長沢浄水場のまわりを歩きます。そして、生田緑地にも梅園あったよね? と行ってみることに決定!

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    生田緑地西口から入り、北部公園事務所で梅園の位置を確認。3月下旬まで一部階段が整備中のため、臨時の迂回路を行きます。「岡本太郎美術館」の横を通り、「奥の池」の手前の階段を上ったところに、梅園(7)み〜っけ。こちらでは51種100本以上の白梅と紅梅が3月上旬まで咲いています。……となると、このおさんぽ通信が更新になるころに見頃となるのは? と北部公園事務所で伺ったところ、「梅園の真ん中にあるこぶし、東口にある紫もくれんが3月中旬に開花します。どちらも大きい木なので、見ごたえ十分ですよ」。

    ときはすでに夕刻。夕陽に照らされた梅の花も美しいのでありました。

    おさんぽクローズアップ!!

    「長澤山 秋月院」

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    天正年間(1573〜1591)創建。ご本尊は準提観世音菩薩。準西国稲毛三十三所観音霊場第11番札所に定められています。

    境内に奉られている「子育地蔵尊」(写真)は子どもの健康と成長、そして安産にご利益があります。赤子を抱いた地蔵菩薩の表情がとても穏やかでやさしく、お参りすると心がほっとするのが不思議です。

    子育地蔵尊の傍らには、境内から出土した板碑の断片。板碑は中世の頃の石塔の一種で、今の卒塔婆に当たるものと説明書きされています。

    参道のほこらには「いぼとり地蔵」と庚申塔。「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿が庚申塔にはよく彫られていますが、こちらのは「聞かざる」の一猿。 境内のしだれ梅は例年3月中旬、利休梅は3月下旬に咲きます。

    ■ 川崎市宮前区菅生2-28-1

     ※ 平成20年(2008)2月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。