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おさんぽ通信

    第21回 生田駅~生田~寺尾台を歩こう!

    2006/08/01
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    1. 生田駅
    2. おぎの豆腐店
    3. 萬休山観音寺
    4. 竹林の木陰
    5. 生田ふれあいの森

    6. 生田浄水場前の急な階段
    7. 土渕不動院
    8. 八角堂跡
    9. 花壇

    おさんぽ記

    生田駅(1)の改札を出て、階段を北口へ下りて行きます。少し歩くと、世田谷通り。押しボタン式の横断歩道で信号待ちをしようとしたところで、角にあるお豆腐屋さんのカウンターをひょいとのぞいてみました。

    おいしいと評判のおぎの豆腐店(2)。私も何回かおいしくいただいたことがあり、できれば買って帰りたい……。でも、例によって、おさんぽはまだ始まったばかり。お豆腐を持ち歩くわけにはいきません。と相談したら、「あとで取りに来る?」と笑顔のご主人。よっしゃぁ〜! はりきって、おさんぽ行ってまいります!

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    信号を渡った先に多摩区役所生田出張所。「日露戦役陣亡軍人忠魂碑」「明治三十七八年戦役記念碑」と刻まれた碑が建っています。「生田のいしぶみ」「ふれあいの郷」と書かれた碑もあり、この地域が開発されたときのものかな、と考えます。

    世田谷通りと平行する道を行き、萬休山観音寺(3)を見つけます。境内へ入って行くと、住職さんとばったり。「ここは茅葺き屋根の寺だったんだけどね」とベンチに座って、しばしおしゃべり。「今の読売ランド前駅が西生田駅と呼ばれていた頃、電車が西生田駅を発車するときの警笛がここまで聞こえてね、急いで走っていくと今の生田駅(当時は東生田駅)のところでちゃんとその電車に乗れたんだ。ホームが今よりずっと低くて、どこからでもひょいと跳び上がれたしね」。
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    生田出張所の方へ引き返すと、左手に気になる階段。これはどこへ通じるのだろう? かなりの段数があるけど、好奇心は抑えられません。一段一段上り、額に汗が噴きだしてきたころ、学校の校舎が見えてきました。「ここは小学校の敷地内ですが、近所の人たちの通り道として開放されているんですよ」と、すれ違ったおばあちゃん。竹林の木陰(4)でひと休みしていたら、セミ、蝶々、アリ、ムカデ、クモ、トカゲが順番に現れては、どこかへ消えていきました。「最近、ヘビは見なくなりましたけどね」。

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    広い通りに出ると、道路脇に野菜や果物などを積んだ移動販売の白いトラック。ラジオのトーク番組がそこから聞こえてきます。少し入ったところに「たばこ」「塩」の看板があるたばこ店。タイル張りの外壁に白い大きな看板、赤い郵便ポスト、そして看板娘が顔をのぞかせそうな窓。「角のたばこ屋さん」の風情を漂わせ、山あいの里にたどりついたかのような景色を形作っています。

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    と思ったら、目の前にマンションが建ち並ぶ風景が飛び込んできました。うわぁ〜! と立ち止まると、左方向へ山道が続いているのを発見。案内標識に消えかかった字で「生田ふれあいの森(5)」と書いてあります。太い見事な幹の桜のトンネルをのんびりゆっくり。「チチチチチチ」「スイッチョースイッチョー」と虫の音に囲まれ、再び蝶々やトカゲの姿を目にします。

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    生田浄水場の門前まで来て、ひゃぁ〜! とまたびっくり。はるか下の方まで延々と続く急な階段(6)。顔を上げれば、多摩川やその周辺のマンション群が一望できます。階段の数を数えながら慎重に一歩一歩。踏みはずしたら、下まで一気に転がり落ちてしまいそうです。さて、その数は、220段! 振り返って見上げると、まるで天国への階段のように見えました。

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    通りを出たすぐ左は、土渕不動院(7)。境内には「閻魔堂」があり、中央に閻魔さま、その左右に十王さま(冥界で死者を裁く10人の王)の石像が並んでいます。そして、それらの前に脱衣婆像(地獄で死者の衣類をはぎとる老婆)。顔を見ると、なんと半開きになった口から歯が何本かむき出しになっています。おもわず、ひぃ〜っ! と猛ダッシュ。「歯が出ていて、怖いでしょ」と不動院を管理しているというおかあさんに笑われてしまいました。「9月第2日曜にはお祭りがあるのよ。立派なおみこしが出て、太鼓も叩くから、また来てね」。この記事が公開されるのは9月第2日曜の後。うーん、残念。また来年を楽しみにしましょう。

    生田浄水場に沿った通りに「東生田自然遊歩道案内図」。見ると、寺尾台の公園に八角堂跡(8)なるものがある様子。それではと、公園内の階段をぜいぜい言いながら上り、八角形に石が積まれた遺跡を眺めます。平安時代初期、寺尾台には八角形の仏堂がありました。八角の円堂は奈良時代に建立された法隆寺夢殿、興福寺北円堂などが知られますが、東日本ではあまり見られない貴重なものだそうです。

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    寺尾台団地を抜けて、並木道のU字路に差しかかります。歩道沿いにはきれいな花壇(9)。蝶々が花から花へひらひらと飛んでいます。気がつくと、黒い蝶、オレンジの蝶、ブルーの模様が入った蝶、大きいの小さいのと何種類もいます。こんなにたくさんの蝶々を見るのは初めて……と、自然とのふれあいを楽しんでいたら、逃げても逃げてもまとわりついてくる1匹のハチ。マンションわきの99段の階段を急いで駆け下りたのでした。

    そして、女子大通りからバスに乗って、読売ランド前駅へ。ポッポー! おぎの豆腐店さん、これから行きますよー!

    おさんぽクローズアップ!!

    「おぎの豆腐店」

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    「原材料の豆、水、にがりの持ち味を大切に、よけいな添加物はいっさい入れない。おいしい豆腐を作るために試行錯誤し、職人の技をもって、ていねいに手作りする」
    ──こうして、だれもがそのおいしさを認めるおぎの豆腐店の豆腐ができるのです。
    にがり100%絹ごし豆腐はやわらかくて、口の中でとろり。舌の上に豆のコクが残ります。あまりのクリーミーさに驚く人もいるようです。そのとおり、ほかでは味わったことがないお豆腐の食感。まずはおしょうゆをかけずに食べるのをおすすめします。
    あ、そうそう。店頭には、おぎの豆腐店の娘さんたちが制作したアクセサリーも並べられています。もの作りへの情熱の血が受け継がれているのかもしれませんね。


    ■ 044-911-6279
    ■ 川崎市多摩区生田7-7-1
    ■ 10時〜18時
    ■ 日曜休
    ■ 100%絹ごし豆腐 1丁180円

    ※ 平成18年(2006)8月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。