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おさんぽ通信

    第24回 読売ランド前駅~菅馬場~菅北浦を歩こう!

    2006/11/01
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    1. 読売ランド前駅
    2. お稲荷さん
    3. コブシ並木
    4. ハナミズキ並木

    5. ケヤキ並木
    6. 玉林寺
    7. 子之神社
    8. 薬師堂

    おさんぽ記

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    読売ランド前駅(1)のホームと線路、そして世田谷通りを渡る「大作歩道橋」は幅があり、通勤通学する人々が大勢行き交っても大丈夫そうな広さ。下の道路を大型トラックが走り抜けると少々揺れを感じますが、電車やクルマの往来やまわりの景色をゆっくりと眺められ、なんと言っても、駅のすぐ前に立派な茅葺き屋根のお宅が建っているのに気づき、驚かされます。

    歩道橋の階段の下に「東生田自然遊歩道案内図」。この先の路地を左に入ったところにお稲荷さん(2)があるようです。細い坂道を上って行ってみると、右側に鬱蒼としたいっかくがあり、大木の足もとに小さな祠が佇んでいました。開かれた扉の奥には一対のお狐さまと、なぜかうさぎのぬいぐるみ。お狐さまは正面をじっと見据えており、その鋭い眼光はこちらの心の奥底まで見透かしているようで、ちょっと落ち着かない気分になります。

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    道をさらに上へ上へ。路面に「○」模様の滑り止め舗装がされていて、傾斜がきついのがよくわかります。坂の上にやっとたどり着いて周りに目を移すと、赤、茶、黄色に紅葉した木々が青空に美しく映え、ここまで上って来たことを歓迎してくれているように見えました。

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    鳥のさえずりを聞きながら坂を下りて行く途中で、道ばたの黄色い小さな花に目がとまります。子どもの頃、友だちとトゲトゲになった種子を服にくっつけ合って遊んだコセンダングサ。「くっつき虫」「ひっつき虫」などとも呼ばれるけれど、私のまわりでは「ばか」と呼んでいたっけと、懐かしく思い出します。

     下り坂はやがて駅前からの女子大通りに合流。右側に寺尾台のマンション群を眺めながら行き、左側に続く日本女子大の敷地から漂う落ち葉のにおいを胸いっぱいに吸い込みます。東門の隣りに「日本女子大学西生田生涯学習センター」。ここでは外国語、絵、書、音楽、パソコン、健康、教養などの公開講座が行われていて、だれでも受講できると看板に書いてありました。

    通りから階段を上り、菅馬場の住宅街へ。道路わきの花壇には菊やコスモスがどこまでも植えられ、秋の盛りにはきっと見事だったことでしょう。菅馬場公園への通りに出て、目の前に広がったのは、鮮やかな黄金のコブシ並木(3)。近所の人がほうきで落ち葉を掃き集めています。公園の角を曲がると、ハナミズキ並木(4)。こちらはもうすでに葉っぱが1枚もありません。
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    そして、坂を下って行ったバス通りはケヤキ並木(5)。落ち葉を踏むガサッガサッという音が耳に心地よく、あちらでガサガサこちらでガサガサとさせ、すっかり嬉しくなってしまいました。このあたりは宅地造成の際、街路ごとに樹木が植えられた地域。「北浦の七色並木」と言われ、ほかに「紅葉通り」「銀杏通り」「桜通り」「楠通り」があります。フルーツパーク前のサクラ並木もそのひとつで、四季折々に地域の人々を楽しませているのです。

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    さて、ケヤキ並木を横切って住宅街を歩き、玉林寺(6)の案内板を発見。小学校から元気な声が聞こえてくる境内に寄ってお参りし、ここでも舞い下りてくる落ち葉を見上げます。旧三沢川に沿い、法泉寺と福昌寺のあいだを通ってたどり着いたのは子之神社(7)。毎年1月9日午前10時より「おまと祭」があり、神官の立ち会いのもと、弓で的を射る神事が行われます。拝殿の柱にはお百度参り用の計算盤が掛けられていて、これでお百度を踏んだ人の苦労はどれほどだったろうと思うものの、とても想像できるものではありませんでした。

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    子之神橋を渡って、再び旧三沢川沿いを行きます。菅北浦緑地の角を曲がり、「薬師堂(8)入口→」の矢印に従って進むと、雑木林に囲まれた境内からザッザッとほうきの音が響いてきました。「毎年9月に行われる獅子舞は商店街のほうから踊りながら歩いてきて、それから境内の土俵で踊るんですよ」。ここを管理しているというおかあさんがほうきの手を止めて話してくれます。「高校生から20歳前後の男の人がお祭りの数カ月前から練習してね。獅子頭をかぶって舞うのは暑いし重いし、体力がある男の人でも倒れちゃったことがあるほど大変なんですよ」。

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    境内には大きなケヤキがあります。風が吹くたび、葉っぱがサラサラ、サラサラ。「サクラ、ケヤキ、イチョウと順番に落ちて、掃いても掃いてもきりがないですね」。苦笑いするおかあさんに、ピンクの花をたくさんつけたもう1本の大きな木の名前を聞きました。「これはサザンカ。この木は女の人のかたちをしているので、お産の木って呼ばれているんですよ」。へぇー、なるほど、確かに。と、感心しているあいだにも葉は次から次へサラサラ、サラサラと落ち続け、おかあさんは諦めたのか、ほうきを片づけ始めたのでありました。

    おさんぽクローズアップ!!

    「薬師堂」

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    文治3年(1187)、領主稲毛三郎重成が建立。常盤御前を守り本尊とし、安産および眼の神さまとして親しまれています。
    毎年9月第2日曜、菅獅子舞保存会によって行われる「菅の獅子舞」は18世紀中頃から伝わり、五穀豊穣、疫病退散を祈願するもの。県無形民俗文化財に指定されており、多くの見物客が訪れます。
    内容は雌獅子をめぐって雄獅子が争うというもので、先導役の天狗と雄獅子、雌獅子、臼(久)獅子が笛や唄に合わせて、ときにしなやかにときに豪快に、鼓を打ちながら舞うそうです。


    ■ 川崎市多摩区菅北浦4-16

    ※ 平成18年(2006)11月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。