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おさんぽ通信

    第49回 百合ヶ丘駅~南生田3丁目停留所を歩こう!

    2008/11/01
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    1. 百合ヶ丘駅
    2. 川崎一号水道
    3. カッパ大王
    4. 読売ランド前4号踏切
    5. 市営高石団地

    6. 高石富士見台緑地
    7. 原店(はらみせ)
    8. 木の電柱
    9. 南生田

    おさんぽ記

    百合ヶ丘駅(1)南口にはロータリーが設けられ、バスとタクシーがお客さんを待っています。地名の由来の1つに「100の丘があった」といわれるとおり、丘が連なる街。必然的に坂も多く、バスやタクシーは移動手段として、たいへん頼りがいがあります。

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    また、駐輪場もほかの駅に比べて自転車の数が少なく、代わりに原付バイクの数が多いようです。と、その駐輪場の向こうに見える、あちらの丘にちょっと不思 議な空間を発見! 斜面に住宅がびっしりと並んでいるのに、何も建てられていない部分があり、それはラインとなって自分が立っている、こちらの丘まで ず〜っと続いているのです。

    もしや!? と地図を見ると、やっぱり、おさんぽ通信 第47回鶴川駅〜大蔵町を歩こう!で、その存在を知った導水管。このラインの地下には相模湖から多 摩区三田の長沢浄水場へ原水(浄化されていない水)を送る川崎一号水道(2)が通っているのです。川崎市水道局のHPによると、相模湖から長沢浄水場まで の導水管の長さは約36km。水は早足で歩いている人と同じくらいのスピードで8時間かけて流れ、その量は1日に学校のプール2820杯分におよぶそうです。

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    この地面の下に私たちの生活に欠かせない水が日々流れ続けているんだとじんわりしつつ、百合丘駅前商店会のアーケード街へ。百合ヶ丘団地が建設された頃か らの商店街は昭和の香りを残しながら、まだまだ現役。なかでも昭和44年(1969)に開業し、平成18年(2006)に新装したカッパ大王(3)は「百 合ヶ丘にこの店あり!」と謳われたラーメン店。「スタミナの王者」とも呼ばれ、ここはひとつ、名物「ウルトラスタミナ麺」でスタミナを注入し、100の丘 がある百合ヶ丘の散歩に挑もうじゃありませんか!

    指の先までテカテカにあたたまった腕を大きく振りながら、線路沿いの坂を下っていきます。左手に現れた踏切は「読売ランド前4号踏切(4)」。ん? 待てよ? 読売ランド前駅から百合ヶ丘駅までに踏切は確か2つ。それなのに4号?

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    かつて、津久井道(世田谷町田線)は丘陵地の急斜面などを避けて開通したので、くねくねと曲がっていました。そこに小田急線の線路が直線的に敷かれ、読売 ランド前駅と百合ヶ丘駅の間には踏切が4つ設けられたのです。しかし、交通量が増えるにつれ、踏切が津久井道の渋滞の誘因となったため、2つの踏切を廃止 して歩道橋を新設。2号と4号の踏切だけが名前もそのままに残されたのでした。

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    さあ、いよいよスタミナの威力を発揮するときです。右へ曲がったところに、見上げんばかりの階段。買い物袋を提げた女性がひょいひょいと上っていくのを追 いかけて、足を懸命に持ちあげます。階段の途中のスペースにベンチが2つ用意されているのを見て、「それは必要」と、うなずきながらも止まることなく頂上 を目指し、約130段を制覇。心臓ばくばくです。





    目の前に市営高石団地(5)。角に建つ酒店の前には郵便ポストがあり、その傍らに庚申塔が祀られています。団地に沿った静かな通りを行き、一戸建ての住宅 街に入っていくと、家々の向こう側に眺望が開けているのに気がつきました。坂を上って下って移動するたびに眺めは南に西に北に東に、四方に広がります。 あっちが百合ヶ丘で、こっちが……どこ? と見渡しては歩き、見渡しては歩き、丘陵の尾根道をぐねぐねと行きます。

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    高石富士見台緑地(6)の先に梅林とみかん畑。遮るものはなにもなく、陽ざしがさんさんと降り注いでいます。「丘だらけだから眺めがいいですよね。私が昭 和35年に公団に引っ越してきた頃は麦畑が広がっていたんですよ」と話しながらご一緒したのは、新百合ヶ丘へのバス停まで散歩するというおとうさん。「そ このクスノキは立派ですよ。昔は目印にされていたんでしょうね」。川崎や新宿方面に眺望が抜ける尾根道は「塔ノ越」と呼ばれたあたり。川崎市選定「まちの 樹50選」の3本のクスノキが堂々とした姿を見せています。

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    「原店はお店をたたんじゃったみたいですね」。クスノキから歩いてすぐの交差点で営業していた原店(7)は、明治9年(1876)に峠の茶屋として開店。 近所のクリーニング店の方が「一昨年までお菓子や雑貨などを並べてお店を続けていらっしゃったんですけどねぇ」と教えてくれました。

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    坂をぐんぐんと下り、そば店の前から左へ入っていくと1軒の食料品店。お店の前の自動販売機でカップ酒を売っているのが、なんだかまたまた昭和 の香り。と、嬉しくなっていたら、木の電柱(8)!? しかも、4本続けて木の電柱!? ここ何年もお目にかかっていませんでしたが、こちらの電柱はお疲 れの様子がまったくなく、すっくとまだまだ、いやあ、元気です。

    「明治製菓グラウンド→」につられて上って下って、たどり着いたのは明治製菓グラウンドの門の前に続く桜並木の通り。また上り坂か……と思ったとき、後方 から小田急線生田駅行きのバス。残りのスタミナをすべて使って、南生田3丁目バス停(9)までダッシュ。座席に腰をおろして、ふぅ〜と溜息をついた瞬間、 あっ! あれは!? 住宅街にちょっと不思議な空間。川崎一号水道が通っているラインとまた出合ったのでした。

    おさんぽクローズアップ!!

    「カッパ大王」

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    温もりを感じさせるウッディな店内外。カウンター席のほかにテーブル席も用意されています。

    店内に貼られたオリジナルポスターには、「味付の魔術師」「どれを食べてもスタミナベッチョリ鼻血がブウー」という名文句。おいしくスタミナ補給できることへの期待が高まります。

    スタミナ麺は創業以来の秘伝のスープで仕上げられた伝統の看板メニュー。ウルトラスタミナ麺のスープをひと口飲めば、野菜の甘みとニンニクの香ばしさがガツンとひと塊りになった濃厚な味わいにカラダが目覚めるでしょう。

    坦々麺、炒飯、豚足の醤油煮込みなどもおすすめだそうです。

    ■ 044-954-1851

    ■ 川崎市麻生区百合ヶ丘1-1-21

    ■ 11時30分〜14時30分、17時30分〜22時30分(日曜は11時30分〜20時30分)

    ■ 月曜休

     ※ 平成20年(2008)12月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。