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おさんぽ通信

    第11回 百合ヶ丘駅~王禅寺見晴らし公園を歩こう!

    2005/10/01
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      1. 百合ヶ丘駅
      2. 百合丘駅前商店会
      3. お茶の三陽園
      4. 松葉浴場
      5. 弘法松

      6. Le Champ de Fleurs
      7. 永遠の春
      8. 鍋ころがし
      9. 王禅寺見晴らし公園

    おさんぽ記

    小田急線百合ヶ丘駅(1)は昭和35年(1960)、公団の百合ヶ丘団地の完成と同時に開業。多くの通勤・通学客に利用されてきました。南口の目の前にあるスーパーマーケット「ゆりストア」はこの百合ヶ丘が本店。なるほど言われてみれば、「“ゆり”ストア」ですもんねぇ。

    「駅前にはまだ車がほとんど走っていなくて、運転の練習だってできそうなくらいの通りだったんだよ」。百合丘駅前商店会(2)のアーケード街で、昭和40年頃からお店を開いているお茶の三陽園(みはるえん)(3)のご主人が笑います。「『百合ヶ丘』という名前の由来は、100人の地権者が開発に力を合わせたから、県花のヤマユリが近辺に自生していたから、100の丘があったからっていう話も聞いたことがあるよ」。

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    当時、神奈川県初の大型団地につけられた名称「百合ヶ丘」は、駅名「百合ヶ丘駅」にも、町名「百合丘」にも命名。「団地ができてから商店も建ちはじめて、にぎやかになっていったんだ。アーケード街のなかでは酒店、理髪店、書店、洋品店、中華料理店がウチと同じように長いね。今、『公団百合ヶ丘第二団地』が建て替えされていて、もうすぐ入居が始まるんだよ」と、三陽園のご主人が教えてくれました。

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    商店街を行った左手の急な階段をのぼり、「公団サンラフレ百合ヶ丘」の高層マンション群を眺めながら歩きます。ここは約10年前に建て替わった「旧公団百合ヶ丘第一団地」。建物のまわりには樹木や植木がきれいに植栽され、広場には子どもたちの遊具。緑とやすらぎのあるスペースが、生活のゆとりを感じさせてくれます。バス通りに出て見つけたのは、バス停「第一団地前」。「サンラフレ百合ヶ丘前」ではなく、以前のままの名称が残されているとは、まるで時代の落とし物に出会えたようで、ふと嬉しくなります。

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     「サウナ」と書かれた大きな文字と温泉マークが見えてきました。昭和36年(1961)創業の松葉浴場(4)。露天風呂、サウナなどが揃う麻生区唯一の銭湯です。風呂付き公団団地の中にあるため、「アイディアが勝負!」と、先代が小銭いらずのオリジナル・プリペイドカードを考え出したり、早くから打たせ湯やジェットバスを導入したり。季節の行事には子どもたちに牛乳をプレゼントするなどサービスも満点。客をあたたかく迎えようとする気持ちが伝わってきます。

    できあがりつつある「公団百合ヶ丘第二団地」に沿った道路には、お散歩がてら工事の様子を見に来ているおじいちゃん。「来年、ここに引っ越してくる予定なんだ。楽しみだねぇ。2年待ったからね。このへんはまたにぎやかになるだろうね」。

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    弘法松公園は、そんなお散歩のおじいちゃんたちの憩いの場になっていました。王禅寺や新百合ヶ丘駅方面を望む景色がすばらしい丘の上の公園。ここには昔、弘法松(こうぼうのまつ)(5)があり、「弘法大師がこの地に寺を建てようと山々の谷を数えたところ、百谷に1つ足りない九十九谷だった。そこで1本の松を植えた」という伝説が残されていました。高さ30メートル、根回り11メートルの大きな巨松は、旅人たちの道しるべとなったこともありましたが、昭和31年(1956)に火事に遭い、枯死してしまったそうです。

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    すすきが揺れる斜面を下り、並木道に出ます。アンティークのフライパンが下がるお店を見つけ、何のお店かな? とのぞくと、フランス菓子店Le Champ de Fleurs(ル・シャン・ド・フルール)(6)。お店の外まで漂ってくる焼菓子のあまい香りに、つい入口のドアを押して、「こんにちはー」となりました。

    さんざん迷って買ったおみやげの白い小箱を片手に、バス停「団地坂上」を目指します。途中の弘法の松交差点には、「永遠の春(7)」と書かれた彫像とご対面。「団地坂上」のあたりは昔、「鍋ころがし(8)」と呼ばれていました。「義経と弁慶がこの地の急な坂を通った際、馬が足をすべらせ、弁慶が落馬しそうになった。そのとき鞍に下げていた鍋のひもが切れ、鍋がころがっていった」という伝承にもとづくものです。

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    そばにある王禅寺見晴らし公園(9)の見晴台に立つと、確かにそこは断崖の上。そして、ここからの景色もまた絶景で、時が経つのを忘れてしばしたたずんでしまいます。百合ヶ丘に100の丘があった頃も(弘法大師によると99の谷でしたし!)、夕陽はこのように沈んでいったのだろうと思いながら……。

    おさんぽクローズアップ!!

    お茶の三陽園(みはるえん)

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    百合ヶ丘団地とともに約40年、煎茶、番茶、深蒸し茶、くき茶、玄米茶、ほうじ茶など豊富に揃えて、人々の嗜好に応えてきたお茶店。

    店内には「茶」と書かれた茶箱が並び、カウンターにはお茶の見本が並んだ「拝見盆」が。おいし〜いお茶をゆるりと味わいたくなる雰囲気たっぷりです。

    「皆さんに喜んでもらえるお茶を」と、オリジナルブレンドを提供するとともに、“業務用のお茶”も隠れた人気商品。お手頃価格で味がよいと評判です。茶道具もあり。

    ■044-966-3342

    ■川崎市麻生区百合丘1-1-14

    ■ 9時〜19時

    ■ 日休

    「松葉浴場」

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    明るく広々とした脱衣所や洗い場、サウナ・露天風呂など8種類のお風呂が自慢の銭湯。 毎月第4日曜(12月は休み)は天然100%ハーブ湯(ラベンダーなど)、お正月(元旦・2日・3日))は利用者全員にお年賀としてパック飲料をプレゼント。
    5月5日(こどもの日)はしょうぶ湯、10月10日(銭湯の日)はおたのしみ湯、12月22日(冬至)はゆず湯。他にもイベントやプレゼントなど、書ききれないほどのサービスあり。フェイスタオル無料貸し出し。


    ■ 044-951-2683
    ■ 麻生区百合丘3-3-5
    ■ 14時〜25時(火〜金)、10時〜25時(土)、朝8時〜25時(日祝・振替休日)
    ■ 月休
    ■ 大人400円、小学生180円、乳幼児80円(サウナは別途 大人も子どもも300円)

    「Le Champ de Fleurs(ル・シャン・ド・フルール)」

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    青山のフランス菓子専門店「ルコント」で修行したご主人。
    季節の素材をたっぷり使ったケーキや、こんがり焼き上がった数々のフランス焼菓子がショーウィンドーやテーブルを彩り、ドアを開けた瞬間から心がわくわくと躍ります。
    パン生地をお菓子風にアレンジした「ボストック」、外側はパリパリ、中はしっとりの「ダコワーズ・ショコラ」など、焼菓子のおいしさに開眼! アンティークの調理器具や家具などのインテリアにも心奪われます。


    ■ 044-965-2988
    ■ 麻生区王禅寺西1-1-1
    ■ 10時〜19時
    ■ 水・第2火休

    ※ 平成17年(2005)10月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。