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おさんぽ通信

    第30回 野津田公園を歩こう!

    2007/05/01
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    1. 野津田公園東入口
    2. 上の原ススキ草地
    3. こもれびの路
    4. ミズキ広場
    5. 炭焼窯

    6. 湿生池
    7. 村野常右衛門生家
    8. 小野路屋敷
    9. ばら広場
    10. ピクニック広場

    おさんぽ記

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    小田急線鶴川駅北口改札口を出て神奈中バスに乗り、「五反田」停留所で下車。小野路交差点を背にして少し進んだ先を左折し、坂を上っていくと野津田公園東 入口(1)の門が迎えてくれます。さらに続くゆるやかな坂を行き、額が汗ばんできた頃、右手に駐車場と公園の管理棟が見えてきました。





    管理棟の窓に公園の案内図。作業から戻ってきた事務所の人が「同じものがありますよ。ちょっと待っていてください」。数秒後、窓口がガラッと開かれ、「は い、これね」と案内図を差し出してくれました。そして、「ばら広場のバラが見頃ですよ」と一言。B4版の紙いっぱいに描かれた案内図のほぼ右端に現在地、 左側上のほうにばら広場があります。

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    「上の原グラウンド」に沿って行くと、上の原ススキ草地(2)。案内看板に「昔はこの付近にも茅葺き屋根用のススキを採取する茅場がありました。ここでは年1〜2回の刈り取りでススキ草地を維持しています」。

    ススキ草地の奥にもう一つ「雑木林更新実験林」の案内看板を発見。「15〜20年サイクルで伐採し、切り株から伸び出した芽を育てる萌芽更新を 通して、適正な管理と活用の実験をしているところです」。ふぅ〜む、自然の営みにバランスよく人の手を加えて、大切に管理しているんだなあ……。そしてそ こで目にしたのは、子どもの頃によく見ていたような“草っぱらの風景”でした。

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    ねぎ坊主をたくさんつけたねぎ畑、かさかさかさかさと音をたてて揺れる麦畑を横目に、ロープが貼られた散策路を行きます。道沿いの灌木に青々と成る実、草 むらに真っ赤なヘビイチゴ、ロープの杭にきれいな黄緑色のバッタ。整然と並んだ姿が美しい杉林を過ぎたところで、こもれびの路(3)の入口を見つけます。


    雑木林を行く路では、名前のとおり、木々の葉のあいだから差し込む日光がそこらじゅうを踊り跳ねています。三叉路でどちらへ進もうか迷っていたら、右手に 数本の背の高い木。4〜5段の階段を下って目の前にミズキ広場(4)が現れました。木の向こうには草原が広がり、雑木林に囲まれています。足下にはたくさ んの直径5ミリほどの穴。アリたちが忙しそうに動きまわっています。

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    木々の上からぐるるるると、何かの楽器を鳴らしているような音。なんだろう? と一生懸命見上げますが、何も見えません。炭焼窯(5)の前のベンチに座って、辛抱強くその正体を待ちましたが、結局わからずじまい。しぶしぶと重い腰を上げます。






    「カワセミを見たって聞いて来てみたんだけど、あれがそうだね」と湿生池(6)の池を指さすのは、首にカメラを提げたおじさん。「カワセミが飛来したって ことは魚がいるんだね。ここでは初めて見たよ」。おじさんはこの周辺を毎日歩き、春から夏にかけては花を、秋から冬にかけては鳥をよく観察しているそうで す。「散歩もただ歩くだけじゃなくて、花や鳥を見るなど楽しみがないと続けられないよね。今日はカワセミに会って、もうここを動けないよ」と、持ってきた おにぎりをぱくぱく。カワセミが水の中に飛び込んだ瞬間、一緒に「あっ!」と声をあげました。 


    湿生池から北入口方面へ進み、桜並木の通りから入ったところに村野常右衛門生家(7)。自由民権運動家として活躍した常右衛門が安政6年(1859)に生 まれた家を野津田町内から移築、茅葺きから鉄板葺きに大改築した大正13年(1924)当時の姿に復原したものです。近くには子ども用アスレチックやター ザンロープが置かれたわんぱく広場があり、そのとなりの芝生広場では中年夫婦や親子連れが楽しそうにお弁当を広げています。

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    ほのぼのとした風景を後にして、日本庭園の階段を上って行くと小野路屋敷(8)。ケヤキ材を多く用いて造られた家屋は、しっとりと落ち着いた佇まい。オタマジャクシが泳ぐ池や展望台がある庭をゆっくりと散策し、すっかり気分がよくなります。



    さて、いよいよ色とりどりのバラが咲くばら広場(9)に到着。ボランティア団体「町田バラ会」が管理協力しているバラ320品種約700株。ゴージャスに 咲き誇るもの、可憐に咲き集うものなど、それぞれの個性を際だたせて、訪れるものを魅了しています。広場のベンチやテーブルでは女性グループが美しいバラ を堪能しながら、おしゃべりにも花を咲かせていました。
     

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    芝生広場とテニスコートのあいだを通って、ピクニック広場(10)へ。まわりを雑木林に囲まれ、野津田公園の広さをあらためて実感します。案内図に従って 再びこもれびの小路を進み、抜け出たところは上の原グラウンド。ひとっこ一人いなかったグラウンドでは、いつのまにかサッカーの試合が繰り広げられていました。

    おさんぽクローズアップ!!

    「野津田公園」

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    多摩丘陵の自然をいかした総合公園。400mトラックがある陸上競技場やテニスコートなどのスポーツ施設、イベント会場やゲートボールなどに利用できる多目的広場も揃っています。
    季節ごとの自然を楽しめる場所であり、市民団体「野津田・雑木林の会」では野津田公園に生息する動植物や水辺の生物の観察会、雑木林の手入れ、クラフト製作など、さまざまな活動を展開中。
    また、公園内では発掘調査によって、縄文時代、古墳時代の集落跡、中世の道路遺構などの「野津田上の原遺跡」が確認されています(残念ながら案内はありません)。
    東入口、西入口、南入口、北入口から入園でき、東入口管理棟、芝生広場、多目的広場にトイレが設けられています。


    ■ 042-736-3131(公園事務所)
    ■ 町田市野津田町2035
    ■ 6:00〜20:00
    ■ 無休
    ■ 陸上競技場、野球場、テニスコート、上の原グラウンドの問い合わせは「スポーツ振興公社 042-724-3440」へ。

     ※ 平成19年(2007)5月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。