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おさんぽ通信

    第46回 川崎市立日本民家園を歩こう!

    2008/09/01
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    1. 生田緑地東口
    2. 本館展示室
    3. 原家
    4. 山下家
    5. 団子屋

    6. 作田家
    7. 太田家
    8. 清宮家
    9. 工藤家
    10. 伝統工芸館

    おさんぽ記

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    生田緑地東口(1)に立つと、まわりの緑に白く覆いかぶさる霧。秋雨がしとしとと降る日は手に持った傘がちょっと邪魔ですが、しっとりと濡れた木々の葉の青さにハッとさせられ、心が浄化されるひとときを過ごせます。

    本館から、いざ! と園内へ進む前に、本館展示室(2)へ。ここでは日本の民家はどのように造られてきたのかを模型やビデオ展示などで知ることができます。昔の農家の生活がわかる展示もあり、古民家の予備知識をラクにアタマの中に入れられます。

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    まず訪れた建物は、明治後期築の原家(3)住宅。22年の月日を費やして建てられた大地主の豪華な木造2階建てです。この日、室内では、はた織りを実演中。「15メートルの長さに揃えたタテ糸にヨコ糸を通して織っていきます。織り進むのは1日に50センチくらい。和服を作るのに必要な布一反15メートルを織り上げるには根気が必要ですね」と話を聞きます。

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    日本民家園では「民具製作技術保存会」の方々によって、はた織り、わら細工、竹細工の実演が毎週日曜などに行われています。作品の展示会、頒布会が催されることもあり、ちょうど原家で開かれていた織物の展示会(11月24日(祝)まで)の作品は、わあー! とおもわず声をあげてしまうものばかりでした。

    宿場町の宿屋や油屋、薬屋の建物で、それぞれの間取りや置かれている生活道具などをじっくりと見ていきます。水車小屋ではギィーと木製の歯車がきしむ音。水路に架けられた石橋には「旧登戸村の農業用水に架かっていた石橋」の案内板。右も左もホンモノばかりで、タイムスリップしてしまったような気分。合掌造りの山下家(4)住宅の2階から見る風景は、まるで“日本昔ばなし”です。

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    山下家住宅1階には「そば処 白川郷」が営業しており、雰囲気たっぷりのなかで自家製そばを味わえます。また、山下家住宅前の休憩所には団子屋(5)が出店。だんごや餅、きび大福などが売られていて、ふぅ〜っと、ひと休み。いやいや、何度見まわしても、自分がどの時代にいるのかわからなくなります。

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    作田家(6)住宅では、わら細工を実演中。「いま作っているのは囲炉裏に吊して、串刺しの焼き魚を保存しておく道具『弁慶』。七つ道具を背負った弁慶になぞってつけられた名前だろうね。魚は大切なたんぱく源だから冬にあぶって食べたり、そばの出汁をとるのに使ったりしたんだよ」。

    雨音がぽとんぽとんと響くなか、太田家(7)住宅で開催中のわら細工と竹細工の作品展示会(11月24日(祝)まで)を鑑賞。昔の人も雨の音を聞きながら、わら仕事に精を出す日があったんだろうなあ、そういう日々をこれらの古民家はずっと見つめてきたんだろうなあ、と思いを馳せます。

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    「どうぞ、あがっていってくださいね」と声をかけられたのは、清宮家(8)住宅で行われていた「床上公開」。毎日、「炉端の会」のボランティアスタッフが民家2〜3棟の囲炉裏に火を入れ、来園者を床の上に迎えてくれます。室内を自由に見学できるうえ、スタッフの方に建物について話を聞くこともできます。赤く燃える炎、薪がはじける音、立ちのぼる煙の香り。囲炉裏のまわりには独特の空気が流れ、時間はゆっくりと流れていきます。

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    南部曲り屋の工藤家(9)住宅の囲炉裏は、ほかの民家のものと造りが少しちがいます。「土間からも利用できるようになっているんですよ」。スタッフの方に家の造りについて教えてもらうと、古民家めぐりがよりおもしろいものになります。毎週土・日曜・祝日14時からは炉端の会による「園内ガイド」が行われ、古民家の特色を解説。当日自由参加OKなので、気軽に参加できそうです。

    階段を何段も上って、船越の舞台から伝統工芸館(10)へ。気がつけば、いつのまにか雨があがり、頭上に落ちてくる水滴は茅葺き屋根からのものだけ。ん? 茅葺きの屋根って、水はけがよくないのかな? 今度おさんぽしたら、スタッフの方に聞いてみましょう。

    おさんぽクローズアップ!!

    「川崎市立日本民家園」

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    昭和42年(1967)、古民家を後世に残すことを目的に開園。

    神奈川の村、東北の村、関東の村、信越の村、宿場のエリアにそれぞれの地域の代表的な古民家、水車小屋、船頭小屋、農村歌舞伎舞台など25棟(ほとんどが指定重要文化財)を移築、復原。全国有数の規模を誇る古民家の野外博物館と知られています。

    民具製作の体験講座、古民家で聞くむかし話、古民家ライトアップ、民家解説、特別展示、お茶会などなど、1年を通してさまざまな催し物も盛りだくさんです。

    ■ 044-922-2181

    ■ 9時半〜17時(11〜2月は16時半まで) ※入園は閉園30分前まで

    ■ 月曜休(祝日の場合は翌日休)、祝日の翌日休(土・日曜の場合は開園)

    ■ 大人500円、高校生・大学生300円、中学生以下無料、65歳以上300円(川崎市在住の人は無料)

    ■ 年間パスポート大人1000円、高校生・大学生・65歳以上(市外)600円

    「そば処 白川郷」

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    日本民家園内。神奈川県指定重要文化財の古民家・山下家を利用。

    長野県戸隠産のそば粉を使用し、その日の朝に仕込んだそばとつゆのみを出すので、売り切れたら店じまい。10月下旬からは新そばを楽しめます。

    店内からは生田緑地の木々が眺められ、11月中旬の紅葉は見事。

    写真は山菜そば630円。安くておいしいと評判です。

    ■ 044-932-7747

    ■ 11〜15時(そばがなくなり次第閉店)

    ■ 日本民家園の開園日に営業

     ※ 平成20年(2008)9月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。