連載メニュー

おさんぽ通信

    第40回 鶴川駅~岡上営農団地を歩こう!

    2008/03/27
    • osanpo40_01

    1. 鶴川駅
    2. 工楽室イイ田
    3. 子育て地蔵
    4. 尾根道

    5. 寡黙堂
    6. 岡上営農団地
    7. やまかげ窯

    おさんぽ記

    小田急線鶴川駅(1)に下車し、土地区画整理事業によって新しくなった北口を眺めます。ここ1〜2年で完成した建物はどれも新鮮な装い。気分がウキウキとしてきて、通りの両側にある小ぎれいな飲食店のメニューやサンプルを1つ1つのぞき込んでいきます。

    osanpo40_02

    「鶴川駅前やすらぎ公園」の花壇はパンジー、ビオラ、ノースポール、ユキヤナギ、スイセンの花で紫、白、黄色。踏切を渡って鶴見川沿いまで出ると、芽吹き はじめた雑木林と満開のサクラが目に入り、春の季語である“山笑う”とは、うん、うまく言ったものだ!と大きくうなづきます。

    osanpo40_03

    まぶしい川の流れを見ながら歩き、おっ?と足を止めて眺めたのは、庭先に並べられたからくり人形とおもちゃ。窓辺の看板に「工楽室イイ田(2)」、から くりのそばに「太陽電池で動いています」と書かれています。コトコト動いて饅頭をつつくネズミや餌をついばむニワトリ、粉をひく水車、お酒を呑む人形がお もしろくて、じぃ〜っ。ほかにも立ち止まって見入っていく人、続出です。

    osanpo40_04

    大正橋を渡ったマンションの前には井戸ポンプ。手押し部分は機能しておらず、水は止まることなく流れ落ちるままになっています。「川崎市災害用井戸 協力の家」の札が貼られているので、ここを湧出源とする井戸水なのでしょうか。

    osanpo40_05

    酒店の前を通り過ぎ、里山の雰囲気が漂う坂道へ進みます。この先にはおさんぽ通信 第12回鶴川駅〜岡上を歩こう!で見つけたせい(塞)の神。その向かい に子育て地蔵(3)が立っています。坂はさらに急になり、右手に開ける眺望はまさに里山。青空に映える白いコブシの花、雑木林のところどころにヤマザクラ の花。赤い屋根の家がちょこんと建ち、鳥のさえずりがこだましています。

    osanpo40_06

    ふと振り返ると、目と鼻の先に鶴川駅周辺のビルやマンション。風景のギャップに息を飲みます。坂を上りきったところには尾根道(4)が走り、反対側の斜面 は畑と竹林。左手のピンクの花を「きっとハナモモでしょうね」と散策中の夫婦といっしょに見上げてから、右手へ進みます。

    osanpo40_07

    「まっすぐ行くと玉川学園の敷地。左に曲がると岡上営農団地。岡上は町田市と横浜市に挟まれ、自然がたくさん残されている場所ですよ」。右手に和光大学を 見下ろす三叉路で買い物帰りのおばあちゃんと立ち話。「35年前に引っ越してきたの。見晴しがいいところでね、ずいぶん住宅が増えたけど、散歩にはぴった りよ。花もたくさん咲いて、これからいい季節ね」。

    畑仕事をしている家族を眺めながら菜の花が咲く道を行き、ガレージに「野菜直売」「漬物」などの貼り紙があるお宅を発見。ん? ここはなんだろ う? と妙に心が惹かれ、「こんにちはー!」。玄関の奥から1人の女性が出てくるのを待つあいだに中をちらり。壁に「ランチ500円」の文字が見えます。

    「火・木・土だけオープンするから、寡黙堂(5)。畑で収穫した野菜を料理して友人にふるまっていたら、友人が友人を連れてきて、そのまた友人 が友人をってどんどん人が増えちゃった。そのうち『悪いからお金取ってよ』ということになったので、500円でお昼を食べられるようにしたの」とご主人の長谷川さん。

    「お茶、飲んでいく?」というお誘いに、ほいほいと甘えて腰をおろし、おいしいコーヒーをいただきまーす。「岡上って環境がいいでしょ。散歩す る人も多くて、うちにふらりと寄っていく人もよくいるのよ」。長谷川さんの気さくなおしゃべりとあたたかい笑顔に心はすっかりくつろぎモード。時間がいつのまにか過ぎていきます。

    osanpo40_08

    やっとの思いで重たい腰をあげ、農業振興地域として整備された岡上営農団地(6)へ。畑や果樹園が広がるなかを花を眺めながらぷらりぷらり。「この先の道 の両側に花がきれいな場所があるよ」と路肩で休憩中の運転手さん。教えてもらったとおりに進めば、サクラ、ヤマザクラ、ウメなど、さまざまな種類の花が道 沿いに現れ、胸がたりらりらんと躍ります。

    osanpo40_09

    「4月中旬からはツツジが咲くんだ」と教えてくれたのは、門に「やまかげ窯(7)」の看板を掲げ、7代目農家だという男性。「趣味で陶芸を やっていて、窯もありますよ。陶芸をやりたいっていう人たちにどうぞと使ってもらっていたら、どんどん人が寄ってくるようになりましてね……」。

    おぉっと、寡黙堂でも聞いたようなお話。「四季折々の自然にふれられて、非日常的な何かを持ち帰られるような良さが岡上にはあります。ぜひ来て みてほしいですね」。人々をこばまず、受け入れるおおらかさがこの地には息づいているのかもしれない。そんなことを考えながら、駅へと向かったのでした。

    おさんぽクローズアップ!!

    「寡黙堂(かもくどう)」

    osanpo40_10

    親戚の家に遊びに来たような居心地のいい場所。

    季節の野菜をふんだんに使って、ちょっと手を加えて作ったカラダにやさしい料理を食べてもらいたいと、去年夏から自宅リビングをリフォーム。

    カチコチカチコチと柱時計の音が響き、そこここに懐かしさを感じさせる家具や食器が並びます。

    「来たい人に来てもらい、また来たいなと言ってもらえる場所を目指しています」とにっこりと微笑む長谷川さん。

    ミーティングや趣味の会などで場所を使いたい場合も相談にのってくれるそうです。

    また、08年4月20日(日)〜30日(水)には、裏山のタケノコ農園を開放。タケノコ堀を楽しませてくれます。29日(火)には友人の音楽グループによるミニライブも行われ、タケノコ料理がふるまわれる予定です。

    ■ 火・木曜は11時〜 ランチ500円(コーヒー付600円)

     土曜(第5週は休み)は9時〜13時

     ブランチ・ランチ500円(コーヒー付600円)

    ■ 臨時休業あり

    ■ たけのこ堀は要予約

      ※ 平成20年(2008)3月27日にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。

    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。