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ふるさとの銘菓

    第31回 鯨羊羹(くじらようかん)(広島県尾道市)

    2016/01/01

     古くから日本人と深い関わりがある鯨。港街・尾道では鯨の皮の黒い部分と白い脂肪層を薄く切って熱湯をかけ、水に晒して酢味噌で食べる「さらし鯨」が一般的だったという。鯨羊羹はその形を模したもので、17世紀前半から食されていた鯨餅が原型といわれる。

     黒い部分は、寒天と砂糖を煮詰めた錦玉羹で、北海道利尻産の昆布を焼いた粉末と高知産の竹炭を混ぜている。白い部分は錦玉羹に道明寺糒(ほしいい)を散らしたもの。ザラリとした表面が脂肪の質感を彷彿させる。口に含むとブツブツとした餅米の粒が感じられ、ツルンとした錦玉羹との食感の違いも楽しめる。名前も見た目もインパクトがあるが、甘さは控えめで淡白な味わい。作り手の高齢化で一時製造が途絶えたこともあったが、尾道の和菓子文化を守り続ける老舗の中屋本舗が平成16年から味と技を継承し、復活させた。鯨の恩恵にあずかる人々の鯨への崇敬の念と、鯨の皮を意匠に取り込む職人の繊細な感性が、滋味あふれる尾道銘菓を生み出したのである。

    中屋本舗 
    ご注文・問い合わせ0848-47-3070
    FAX 0848-47-3090
    広島県尾道市高須町東新涯4835-3
    営業/9時30分~18時30分 
    定休日/無休(1/1(祝)・2(日)を除く)
    鯨羊羹ハーフサイズ1本648円、1本1,296円 http://www.nakaya-honpo.com/