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藤田優一君の街角ワンショット

    vol.13 王禅寺で育った日本最古の 甘~い「禅寺丸柿」

    2012/11/01
    • matikado_13
      日本最古の甘柿、禅寺丸。今も住宅の庭先などで見ることができる。

     柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺。これは有名な正岡子規が読んだ俳句。今回のお話はその正岡子規について…ではなくて、柿について。秋にもいろいろあるけれど、麻生区の秋といえば、「柿」。禅寺丸柿の秋ではないでしょうか?


     地元の方はよくご存じであろう禅寺丸柿。禅寺丸柿は川崎市麻生区が原産の日本最古の甘柿の品種なんだとか。その歴史は古く、発見されたのは鎌倉時代。川崎市麻生区にある古刹、王禅寺の山中で等海上人がお寺の再建のために木材などを探しているときに、偶然自生しているものを見つけたことからその存在が知られるようになったそうなんです。それまでの柿というのは渋柿しかなく、甘柿という存在は知られていなかったということで、これが日本で最古の甘柿と位置づけられているんだそうです。それにしても日本で一番古い甘柿が神奈川に、それも麻生区にあったとは驚き。


     ちなみに見つけた等海上人は、実際にこれを食してその旨さに感動し、禅寺丸柿を持ち帰って接ぎ木をして栽培し、かつ周辺の村人にも育てるよう奨励をしたんだとか。そのおかげもあり、この地は禅寺丸柿の産地となり、最盛期は年間100両もの売り上げを誇るヒット商品!?になったそうなんです。そして、道路や鉄道が整備された明治末期から昭和初期にかけては、関東地区のみならず名古屋方面にも出荷という人気の柿にまで成長。


     しかし、現在は新しい品種の柿の登場などもあり、市場では見かけなくなってしまいましたが、絶滅したわけではなく、秋になれば麻生区周辺の直売所や住宅の庭先などで禅寺丸柿を見かけることができます。そして近年は、禅寺丸柿を使ったワインやお菓子なども売られ、地元の柿を使った新たな特産品として改めてその存在感を発揮し始めているんですよ。


     丸みを帯び、かつ、小ぶりで果肉には木目状の斑点があるが、味はとっても良いという禅寺丸柿。もし、かの正岡子規が食べていたらどんな句を詠んだのか?そんなことも気になる秋の味覚です。

    文・写真 街角レポーター 藤田優一
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